愛のはなし 拓斗×咲哉

□投稿拒否児とヒーローと
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引きこもりの冬休みが終わり新しい新学期が始まる今日。
制服を来てコートを羽織りリュックを背負い家を出た。
家から出てそんなに経っていない所で足を止める。
教室ではずっと独りだった。
特に何ともない。いじめられているわけでもなかったし。
想像してみると前よりも孤独でうまく呼吸が出来そうにない自分がいて、それ以上先に足を進めることができない。
だからと言って家に戻る気分にはならなかった。
もう自分に手を出してこないが、それでもその男と同じ家の中にいるのは耐え難い。
居場所を探して歩くしかなかった。

いつも拓斗と由美と3人で行ったマッ○が見えてきて、すごく昔のように懐かしかった。

「君、どうしたの?学校は?行きたくないなら、少しお茶しない?」
声を掛けてきた軽そうな男は矢継ぎ早に誘ってくる。
行くわけないのにと思っていると。

「き、き、君!」
激しい吃音と裏返った声に振り向くと、以前暴漢から助けてくれた静江がいた。
相変わらず弱々しい。
「あ、俺。この人と法律事務所に行かないといけないので」
静江の手をとり男の前から去った。
咄嗟に法律事務所の名前を出したのは、追いかけられでもしたら困るからお堅い業種の名前を出せば手を出さないだろうと思ったからだ。

「き、君、て、て」
「何?」
「て、手を」
バッと繋いだ手を振りほどかれる。

「ルミナスちゃんとはどう?」
「き、君には、か、関係ない。き、気になるなら話すけど」

あー、話したいんだなと理解し促すと吃音が嘘みたいにペラペラと話し出す。
握手会に参加して両手で握られ、あなたは私のヒーローだよって言われたとか、歌ってる最中に指差しを食らったとか。

すごく嬉しそうにイキイキと離す彼が羨ましい。

「そんなに好きなんだね・・・」
「!!」
静江は何故かハッとして俺をまじまじと見た後、君は二番目だからと意味不明なことを言う。

「好きな人がいて羨ましいよ」
「君は・・・」
「そうだ。さっきも助けてくれてありがとう。やっぱり静江さんはヒーローだね」
「!!」
「俺、この前静江さんを思い出してヒーロー地味たことをして、全てを失った感じ」
あははと笑うと、ガッと肩を持たれる。

「ひ、ヒロインはヒーローに、ま、ま、任せてくれればいいんだ!き、危険だからっ」

すごく真剣な顔をしてまるでプロポーズするくらいの勢いで。
どうも女の子だと勘違いしているらしい静江にニコリと笑う。

「静江さん。俺、男だよ。俺も、静江さんみたいに大切な人を守れるヒーローになりたかったんだ」

静江は目を見開いて一歩俺から離れ、嘘だろ?と表情だけで語り、でも少し時間がかけて頷いた。

「な、なれる。誰でもヒーローになれるってルミナスちゃんは言ってた」

うんうんと頷きどこか遠い方を見た静江に、そうだといいなと呟いた。
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