愛のはなし 拓斗×咲哉

□ふりだし1
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「由美、クリスマス一緒に過ごさない?」


枝ばかりになってしまった中庭の木を眺めながら廊下で由美と話す。
教室の中は暖房が効きすぎるくらい暖かいが廊下は冷え冷えとして、休憩時間と言えどもあまり生徒は出ていない。
相変わらず俺には拓斗と由美しか友達がいないボッチだったけど、特に淋しいとも思わないが苛める訳でもなく興味深そうに見られるのは単純に居心地が悪い。
皆が近付かない理由は俺が輪姦されたことが原因だろう。
一応噂話程度で回っているらしいが、実際本当の話だ。
巻き込まれたくないと思うのは当たり前のことだし、実際巻き込まれでもしたら大変なので俺から積極的にお友達作りなどしない。
由美は噂が真実だとしても関係なく俺と一緒にいてくれる唯一つの友達だ。
その由美は拓斗と付き合っていたが別れ拓斗は今は俺の彼氏になった。
自分のせいだろうかと少し罪悪感を抱いているが、由美は全然気にしてる素振りも見せず、別れた拓斗ともいい関係を築いている。

「咲哉くんってば!クリスマスって言ったら恋人にとって一年で一番を争う大事なイベントデーなのよ!なんでそこに私が居るのよ!」
すごい剣幕の由美に落ち着けと手をあげる。
「3人でパーティーやったら楽しいかなって…」
由美はうるうるした目をして俺の手を両手でぎゅっと握る。
俺より少し低いくらいの背の高さなのに手は華奢で傷ひとつない滑らかな肌だ。
「咲哉くん。嬉しいけど、考えてみて。例えばデートで遊園地。夜景の観覧車。2人は隣に座り綺麗だねっていう咲哉くんにお前の方が綺麗だよって言って、ち、ち、キャー、その先はお任せします」
一人で盛り上がる由美に、どんな漫画読んだのと聞いてみたくなる。
「そうだ!それにクリスマスは拓斗の誕生日じゃない!Wイベントじゃない!」
「え?拓斗の?!」
「知らなかったの?男子ってこれだから…」
はあ、と盛大にため息をつかれ俺は俺で初めて仕入れた情報に慌てていると後ろから肩を抱かれた。
「女子トークか?」
拓斗の低音が耳を擽り体が跳ねる。
「拓斗。誕生日クリスマスの日だってこと言ってないのね」
「あ。忘れてた」
「はぁ?クリスマスの日のデートのことは?」
「それは多少は考えてる」
拓斗がクリスマスの日のデートを考えてると聞いて嬉しくなる。
「あ、咲哉くんったら、赤くなってる。拓斗、咲哉くんが可愛いよ」
「そんなの前から知ってる」
当然のことのように口にした拓斗に俺はもちろん由美も赤くなった。
「やだ、2人して…美味しすぎるんですけど。ここ学校ですよ?」
「美味しすぎるってなんだよ」
友達にしては距離が近すぎるよな、と抱き寄せられたままの肩に置かれた拓斗の手を見る。
拓斗とつきあうようになってずっと幸せな毎日を送っている。
由美とも友達でいれて本当に幸せだ。
幸せすぎて怖い、と聞いたことはあるが本当にそうだと染々思った。


「そうだ。咲哉くん、パーティーのお誘い嬉しいんだけど、先輩から付き合ってって声をかけられてて何だかいい感じなの。もしかしたらクリスマスまでに付き合ってデートできるかも」
照れ臭そうに笑う由美はいつの間にか新しい恋をしているらしい。

「そうなんだ?2年生?」
「うん、そう。また教えるからね」

始業を知らせるチャイムが鳴って俺たちはそれぞれのクラスに戻った。


拓斗の誕生日とクリスマスのデート、それに由美の新しい恋。
大事な情報が一気に増えてその後の授業は集中出来なかった。
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