日常編

□好きな理由前編
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館のゲストルームでは、よくピーチ姫がお茶会を開いていた。
本日お呼ばれしたのはマリオとルイージの2人。

少ない気もするが、2人だけがお茶に呼ばれるのはキノコ王国ではいつものことだった。
異世界交流が多いこの館で、馴染みの顔だけでテーブルを囲むのもたまにはいいものだ。


「紅茶のおかわりはいかが?」

「うん、ありがとう」

ピーチ姫の作ったお茶とケーキは、本当に美味しい。
キノコワールドにいたころと何ら変わらない味に、マリオもルイージも舌鼓を打つのだった。


テーブルの上が、あらかたなくなると
2人は満足げに髭を撫でた。同じしぐさで髭を撫でる兄弟らしい姿に、ピーチ姫も思わず微笑む。


「ふぅ、今日も美味しかったよピーチ姫」

「うん、なんだかふるさとの味って気がしたよ」

「そう言ってもらえて嬉しいわ」

久しぶりにピーチ姫のケーキを食べた2人は彼女に賛辞を贈る。

ピーチ姫も笑顔で返し、また優雅に紅茶を飲み、「そういえば」と顔をあげた。


「今日はルイージに聞きたいことがあったの」

「僕に?」

なんだい?と首をかしげながらカップを傾ける。


「ルイージはアレ・マーのこといつから好きなの?」


「ごふっ…な、な…なんで……!」

動揺を隠すこともできずに咳き込むルイージ、

なんで?どうしてピーチ姫がそのことを知ってる?
…はっ!兄さんか!

むせたせいか、はたまた羞恥のせいか、若干涙目になった瞳で兄を睨んだ。

マリオは、ピーチ姫でムキに反論する姿を見せたくないのか、
双子の弟にだけ通じる程度にすました顔で小首を傾げた。

どうやらマリオがばらしたわけではないらしい。


「(じゃあ、だれが…)」

戸惑うルイージの顔を見て、うふふとピーチが笑う。

「やっぱりそうなのね、そうじゃないかと思っていたの」


「!…(やられたっ…)」

かまをかけられたことに気づき、バツが悪そうに帽子を深く被った。
恥ずかしがっているルイージにピーチは楽しそうではあるが、すんなりと謝る。


「ごめんなさいね、それでいつからなの?
こっちの世界に来てから?」


「えっ…と…」


ぐいぐいと質問されるが自分の恋愛話など、シャイなルイージはしなくない。

しかし、敬愛するお姫様から、「おしえて?」と
小首をかしげられて、突っぱねられるキノコ王国民がいるわけがない。

マリオも「あきらめなよルイージ」と少し憐れんだ様子で笑った。
自分よりピーチとの付き合いが多いマリオがそう言っているのだ。

自分には、話すという選択肢しかないらしい。


腹をくくったルイージは、ほとんど空になったカップを見ながら、
ぽそぽそと正直に答えた。
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