dream

□シェーン18
1ページ/3ページ



なんだかぎこちなく小さめの音を立ててノックされた扉を開くと、ついこの間ミカウの恋人となったばかりのシェーンが僅かに頬を染めながら立っていた。

『おはよう』
「よ、よぉ。まだ寝てるんじゃないかと思って来てやったけどちゃんと起きてたのか」
余計な一言は彼なりの照れ隠し。
どこか遠くへ視線を飛ばしながら恥ずかしそうに頬を指で掻き、それからちらりとミカウの瞳を見た

その瞳が朝日に照らされ美しい輝きを放っているように見えるのは彼女が自分の恋人となってくれたことによる色眼鏡か。
そう思うと更に恥ずかしさが込み上げてきて、シェーンはまた視線を逸らして牧場をのそのそと歩く牛たちを眺める。
『…ご飯、食べた?』
「え?あ、いや…」
『…よかったら。簡単なものしか作れないけど…』
出勤前に顔を見れただけでもラッキーなのに手料理まで味わえるなんて!と内心湧き立つ心を鎮め、にやけそうになってしまう口元を覆いながら彼はぶっきらぼうに答えた
「ま、まぁ食べてやってもいいぜ」
そのあからさまに動揺した返事を聞いたミカウは彼女なりに精一杯の微笑みを向けながら、自身の家の中へと彼を迎え入れた。










「(俺が送った花束、こんな丁寧に飾ってくれてるんだな…)」
テーブルの上に飾られた花たちを見ていると告白の瞬間の焦りや不安を思い出してしまうが、ふとキッチンを見れば彼の恋人となったミカウが料理をしている姿が目に入る
半ば信じられないことだが、これは確かに現実だ
食欲をそそるフライパンの上で熱せられた油のにおいと、妙な勝利感を同時に深く味わう。
「(…あ、寝グセついてる。…毎日あれをちゃんと整えてから外に出てたんだな…。てかエプロン姿が可愛いじゃねえか。……あいつのこんな姿を見てるのは世界で俺一人なのか…。)」
はぁ、と恍惚の溜息を落としながら暫しの優越感に浸っているシェーンへ突然ミカウが顔を近付けて覗き込んできた
『…シェーン…?』
「うわっ‼⁉」
『!…お、驚かせちゃってごめんなさい…トーストにバターを塗るか聞きたかったの…』
「あ…、あぁ。塗っといてくれ」
バクバクと暴れ打つ鼓動を落ち着かせるようにシェーンは胸元へと手を当てた。
「(慣れねぇ…!あいつの顔が近くに来ると死ぬほどドキドキする…!!)」
何度目かの同じシチュエーションと、それに対する変わらない自身の反応を恥じながら再び朝食の準備へと戻るミカウへ視線を移す。
ポップアップトースターからカシャンと音を立てながら飛び出してきたトーストに手際良くバターを塗り皿へ乗せたあと、空いたスペースにスクランブルエッグとウインナーが並べられた
そのランチプレートをシェーンの前に置き、彼女は僅かに微笑みながら"どうぞ"と囁く。
そんな何気ない瞬間にすら胸の高鳴りを覚えつつシェーンはカリカリに焼かれたトーストへ齧り付くのだった。







次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ