dream

□シェーン14
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『…はぁ、しあわせ…』

目の前に並んだスイーツの数々にミカウは両手を頬に当て恍惚の表情を浮かべた。
大きな苺が乗ったショートケーキ、色とりどりのマカロン、美しい輝きを放つフルーツタルト、可愛らしいデコレーションのされたパンケーキ、出来立てのフォンダンショコラ…
同じテーブルを眺めるシェーンは胸元を押さえて"うぷ…"と何かを堪えているようだった。
「…ほんとに、全部食うのか?」
『もちろん』
「すげえな…いくらビュッフェだからってこれは…」
『いただきます』
彼の声など構うことなく、ミカウはフォークとナイフを駆使して目の前に広がるスイーツのダンジョンを攻略していった。
いつもの凍て刺す表情の彼女は何処へやら、一口運ぶ度にうっとりと幸せまで噛み締めるその顔は今までに見たことがない
「幸せそうだねぇ」
まるで他人事のように呟けば、彼女が大きく頷くのが見えた。










『えと、タピオカミルクティーと…あ、マンゴーオレンジのやつもください。Lサイズで』
先程スイーツビュッフェを堪能し切っていたにも関わらず、ミカウの身体の何処にそれだけの量が入ると言うのだろうか
大量のドリンクが入ったカップを二つ手に持ちシェーンの元へ帰ってくる彼女は些か誇らしげに見えた。
太めのストローに口を付け、初めてタピオカを味わった瞬間に瞳が大きく開かれる
『……!!!』
「美味いか?」
こくこくと何度も頷くミカウが愛らしくて自然と微笑んでしまうシェーンへ飲みかけのドリンクが差し出された
『おいしいよ』
「……たしかに」
甘ったるいが、ミカウと共有するものなら何でも美味しく感じてしまうのだとシェーンは胸の内で呟いた。








『…楽しかったね』
「ん?あぁ、そうだな」
帰りのバスの中、ミカウの両手いっぱいの紙袋にはどれもズズシティで有名なスイーツショップの名前が印刷されている。
勿論、シェーンの腕にも同じだけの数の紙袋が預けられていた。
「これ全部冷蔵庫入れるのか?」
『…半分は』
「あとの半分は?…まさか食べるって言わないよな」
暫く見つめ合ったあと、ミカウの視線は窓の外の景色へと逸らされる。
どうやら暫くは大量のスイーツを消費しながら生活していくつもりらしい。
ここまでくると最早呆れを通り越して尊敬すらしてしまう。愛しさを込めて僅かに自由の利く指先でミカウの指先を握りしめた。







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