dream

□シェーン6
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ポストに投函された手紙にはミカウと名前が記されていた。






ーこんにちは
この間は一緒にフラワーダンスを踊ってくれてありがとうございました。心からの感謝を込めてー


「…ダイヤモンド?マジかよ」

職場であるマートの倉庫内でコーラを喉に通しながら手紙の中に同封された宝石に目を丸くさせた
掌の中で美しく輝くそれはまさに宝石の王、金剛石、ダイヤモンド
たった一回のフラワーダンスで、しかも別れの直前に照れ隠しからの嫌味で締めてしまったにも関わらず、まさかこんな謝礼が届くとは思っていなかったシェーンは彼女の真意の"裏"を疑ってしまいそうになる
(偽物か?)
光を乱反射させるそれを掲げて四方八方から覗き込んだところで本物かどうかを見抜く知識も何も持ち合わせてはいない。
ダイヤを持ち直して今度は目前で観察してみる、と、シェーンはあることに気付いた

「…甘い、匂い?」

まるでストロベリーのような甘く芳しい匂いが彼の鼻腔を刺激した。
もう一度、と鼻先で嗅いでみればやはりその甘い香りはダイヤモンドから発せられるものであることに違いなかった
宝石のことは名前程度しか知らないシェーンの頭の中は更に困惑する。
(ダイヤって匂いすんのか?)
ふと時計を見上げれば休憩終了まであと5分といったところ
美しいそれを手紙の中に戻してズボンのポケットの中へ乱暴に押し込んだ。













「よぉ」
「やぁシェーン、お疲れ様」

仕事終わりに足を運んだのは町の診療所
本来なら閉院の時間ではあるが、シェーンが患う鬱とアルコール依存症の治療のため、ハーヴィーはわざわざ時間と診療所空けて待ってくれているのだ。
慣れた足取りで診察室へと歩む

「…仕事終わりかい?」
「ん?あぁ」
「そうか、それにしてはなんだか嬉しそうだね」
「!そう、かな」

自分では全く意識していなかったことを指摘され気恥ずかしそうに頭を掻く彼をハーヴィーはにこやかに見つめた。
やや使い込まれたカルテが開かれる音がいつものカウンセリングの時間だと告げる。












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