dream

□ハーヴィー1
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秋の27日目
毎年恒例のスピリットイブが始まり町の中は怪しい炎に照らされる。
あちこちで子供や女の悲鳴が響き渡り、いつもとは違うおどろおどろしい雰囲気に包まれていた。
ペリカンタウンへ引っ越してくる前はよくホラー映画を観に行ったもので、久し振りにアドレナリンが放出されそうなイベントだとテトは胸を弾ませた。

メインは公民館前に造られた巨大迷路。見事奥までたどり着けたものには商品が用意されてるらしいが彼女には皆目見当もつかず、そこに何が待っているのか期待が膨らむばかりだった。

ふと町の中へ視線を投げると友達のミカウが見えた

『ミカちゃーん!来てたんだね』
「テトちゃん」
『それなに?』
「パンプキンシェイクだって、美味しいよ」

ミカウの口から離されたストローを向けられたのでそのまま口に含む
いかにもイベント屋台で売られているかぼちゃと砂糖の甘ったるいシェイクだったが、たまにはこんな味も悪くない。

『うん、おいしい!…そういえばミカちゃんは迷路行った?』
「ううん、これ飲んだら行こうと思ってた」
『そっかぁ〜。私はこれから行ってくるね!…怖そうだからシェーン誘ったほうがいいんじゃない?』

にやり、目を細め口角を上げて告げればミカウの顔がたちまちに紅潮した

「テトちゃん!」
『えへへ、顔赤いよ〜?』
「…もう!」

いつものように一つからかい終わったところで手を振り別れた。


次の目的はもう一人のからかい対象であるハーヴィーなのだが、先程から彼の姿は一向に視界へ入ってこなかった。
仕方なく一人でお化け迷路へと歩みを進めていると、その入り口で彼の姿を見つけて駆け寄る。


『せーんせ!』
「!びっくりした…」

後ろから背中をポンと叩くとハーヴィーは驚いた表情のまま振り返った。
彼は意外と超常現象系に弱いらしく、スピリットイブもあまり得意ではないと以前から話していた。
からかい調子の幸先は良さそうだと彼女はくすくす笑う

『迷路怖いんですか?一緒に行きましょ』
「ぁ、待ってテトさん!」
『?』
「ほら、暗いですし、危ないから」

そう言ってハーヴィーの手が彼女の手を捕まえる
そのまま指と指を絡ませしっかりと握り合うと少し恥ずかしそうに"これで大丈夫"と、まるで自分に言い聞かせるかのように呟くので、またそれが面白くてテトは吹き出してしまった。






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