dream

□シェーン3
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朝6時
どこからともなく鶏の鳴き声が聞こえてくる、天然の目覚まし時計。
いつもならそれを合図にベッドからすんなり起き上がれるのだが、先日の酒が残っていることと同タイミングで体力を異常に使ったことが原因で、今日は全く起き上がることができなかった。


先日の行為の直後
シェーンは自分のベッドに仰向けで倒れ込むとすぐに眠りに落ちてしまったようで、彼女はそのまま何も告げずに逃げ帰ってきてしまった。
起きた時に彼が全てを忘れていればいいのに、と目を瞑る。


今日は世間では生憎の雨
かもしれないが彼女にとっては恵みの雨だった
腰も足も筋肉痛のようでとてもじゃないが広い牧場の管理なんて出来そうになかった
鶏たちの餌は昼ごろに与えるとして、さぁ何時まで横になっていられるか…アルコールが若干残っている脳でぼやりと考える。
そこへ愛犬が何かを引っ掻く音が聞こえた

『?』

思わず身体を起こし音の方面を見遣ると、愛犬が外への扉へカリカリと爪を立てていた
こんな天気でも外で遊びたいのだろうか。そのままベッドから脚を下ろして立ち上がる
犬が尻尾を振り舌を出して喜んだ
ドアノブを捻り開放した瞬間に、ウォン!と一つ大きな声で吠えた

「わっ、犬っ!」

突然の人間の声に驚いて外を見ればそこには、同じように驚くシェーンが立っていた。
決して小さくはない愛犬が飛び掛かり、小柄な彼は押し倒されそうな勢いだった

『こらっ、こらっ!やめなさい!』

胴を抱えて無理矢理引き剥がせば、何故いけないのかという顔でこちらを振り返られる。

『ご、ごめんね。うちの子お客さん大好きだから…』
「いや、全然いいんだ」

シェーンは怒るでもなく犬の頭を撫で優しく笑った
昨日から彼はコロコロと表情を変えるなと思ったら何故か恥ずかしくなり慌てて視線を逸らす

『…っそういえば、何か用?』

まだ時間は6時を過ぎたばかり
シェーンが住むマーニーの牧場とここが近いとは言え、なんだかんだ20分は掛かるはずだ
早朝から何を思いここへやって来たのか、聞くのが少し怖かった
すると突然彼が勢いよく頭を下げるのが視界に入った

「昨日は悪かった、……その、…」
『!!…ううん、私の方こそ』


いやな沈黙が流れる。
シェーンはゆっくりと頭を上げるが、その瞳はとても悲しそうに揺れていた

「…………嫌だったよな。ほんと、ごめんな」

朝から勢いよく降り頻る雨の音にかき消されそうになる彼の声をなんとか拾う。
拳を強く握り自分自身を責めているであろう彼の腕を掴んで引き寄せた

『き、嫌いだったり嫌なのにあんなことしない…!』
「!」
『シェーンだったから、』

ぎゅう、と彼の腕を強く握ったせいでそこには赤い痕が残ってしまったようで慌てて手を離す
しかし彼はそれを悪い方向に気にする様子はなく、どこか安心したようにその痕を撫でて"そうか"と微笑んだ

『……コーヒー淹れる』

彼女からの遠回しげな誘いにシェーンは家の中へと足を運ぶ






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