dream

□テト
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優しく抱き寄せられたテトの身体が柔らかな皮膚の感触と甘い香りに包まれ、大きな瞳が更に見開かれる。
「み、ミカちゃ」
『もういいんじゃないかな』
後頭部に乗せられた手のひらが全てを慈しむように撫でるので、その優しさにぼろぼろと涙が溢れてきた
『全部忘れたって誰も怒らないよ』
呪いのように、鎖で縛り付けられた心が少しずつ解き放されていくような感覚と共に震えた指がミカウの服を掴んだ。
力無く握られたそこが不格好なシワになることも気にせず彼女はそれを受け入れる。
テトの涙で滲んでいくことも何もかも気にせず。
『…たくさん傷ついたテトちゃんが好きになった人だから、ハーヴィー先生はきっと素敵な人なんだと思う。テトちゃんのことを知っても嫌いになったりしないよ』
「…っう…ぅ…ミカ、ちゃ…ん」
止め方が分からないのかと感じさせるほどに涙を流す彼女は慟哭寸前で、今にも大声をあげて泣き喚きそうだった。
そんなテトの姿を闇から守るように強く抱き締めるミカウの瞳が悲しげに伏せられる
『…もし先生がテトちゃんを傷付けることがあったら、私が許さない』
ミカウには、そうすることでしかテトを守ることは出来なくてそんな己の無力さが不甲斐なかった。
胸の中で嗚咽をあげる彼女が落ち着くまで、ただただ腕に力を込めて抱き締めていた。


















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