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□理想恋愛概論
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 これは、欲望に任せた自慰的な恋愛や、仮面を被り表層に漂う希薄な恋愛を、心のどこかで「不本意」だと感じている人達と、これから理想の恋人、理想のパートナーを獲得したいと願う人達に向けた「理想恋愛概論」です。


「恋愛におけるジレンマ(理想と現実)」


 人は「理想と現実」の狭間でいつももがき苦しむ。

 ましてやそれが「恋愛」となれば、より一層ジレンマを感じることだろう。

 心を相手に奪われ、理性をなくし、自分自身を見失うと言った典型的なパターンに填るのは、恋愛の「魅惑」に支配されてしまうからだ。


 そんなアンバランスな精神状態の中、どうにか願いが叶い相手の心を射止めることが出来たとしても、そこから先には「現実」が立ちはだかり、やがて「恋愛」に対する”甘く切ない”気持は消え失せ、恋人と一緒に居る時でさえ孤独感を覚えると言った新しいジレンマに遭遇する。


 それなのに、その本質を見極めようとする人に出会うのは、森の中で妖精に出会うよりも難しい。


 積極的に出会いを画策し恋人を探し求める人、あるいは偶然の出会いの中で自然に恋人を見い出す人....どちらも「出会い」であり、恋人には変わりはない。


 「恋愛」とは、自分勝手に思い描いた天高き理想(美しき主観)を、好きな相手に対し重ね合わせること。

 つまり自分が抱いている「私的幻想」を相手に投影することから始まる。


 それは容姿から始まりちょっとしたクセや性格の細部に渡り異論を受け付けない。

 しかし幻想であるが故、戸惑い、「こんなはずじゃない...」と感じながらも、独りぼっちに戻るくらいなら、いっそ目の前の「現実」に折り合いを付けて行こうと言うことになる。

 勿論、これは「本質」を見極めた結果の行為ではない。


 漕ぐことを止めてしまったボートの上で、”色褪せたモノクロームのオール”を見つめ、ゆらゆらと湖沼に浮かんでいるだけに過ぎないなんだ...「きっとどこかの岸辺へ風が運んでくれるだろう」と...。


 柔らかい午後の陽射しを浴びながら、”自分を探る旅”に出かければ、何時かはキッカケが掴めるかも知れないのに、不本意と気付きながら手立てを思惟することもせず”生温い風”に身を任せている。


 来る日も来る日も行き先の分からないボートに揺られ、無意識に変わって行く”心の形”を、場面場面で繕うことが「柔軟性や適応力」なんだと言い聞かせる...。


 恋人に対する「私的幻想」の投影を止め、”これからは現実と向き合って行こう”なんて物解りの良い人達は、いつの間にか心の中に降り積った灰に冒され、決して言ってはいけない言葉を、衝動的にぶつけてしまうことなど少なくない。

 そしてそれが、5年以上付き合ってきた二人の関係に、終わりを告げることも良くあることだ。

 身の程も知らず自分を過大評価している人は”爆発”する危険性が高い。


 生きて行く上で、絶えず降り注ぐ多種多様のストレスを、たやすく緩和させたり消去出来るのであれば、こんなに苦しまなくても済むのではないだろうか...。

 人間とは、それだけ未熟で脆弱性に満ちている動物なのだ。


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