〈二部〉

□9 自分磨き
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主は、朝の日課を早々に切り上げ加州と大和守の部屋へと来ていた。



加州「主が、女子力を上げる…。」

『うん…どうしたら良いかなぁ?』

加州「何で?」

『えっ?何でって、何で?』

加州「ねぇー質問を質問で返さないでよ。」

『う〜ん。女っぽくなりたいから?』

加州「疑問系って…ぽくなりたいって…女子じゃん!」

『そうなんだけどさぁ…』

大和守「ねぇ〜清光。主が、お前を頼って来てるんだから意地悪しないで手伝ってあげなよ。」

加州「俺は!…別に意地悪なんて…(小声)」

大和守「清光が、やらないなら…僕が、やろうかな。ニヤリ」

加州「あっダメ!!俺が、するんだから〜!」

大和守「良かったね、主。ニコ」

『ありがとう、安定!では、清光先生!!宜しくお願いします。』

加州「…ハメたな。ギロ」

大和守「勿体ぶらない。クスクス」



主は、加州にマニキュアを塗って貰う。



加州「ねぇ〜なんで、急に女らしくなりたくなったの?」

『う〜ん…何となく?』

加州「恋…とかじゃないよね?」

『ドキッ』

加州「…今、ドキッとしたでしょう。」

『えっと…』

加州「俺の為にだったら嬉しいんだけどなぁ〜」



加州は、主の爪を塗りながら上目遣いで見てくる。



『あぁ…いちいち可愛いんだけど…///』

加州「はぁ💨相手は、俺じゃないのかぁ〜。」



加州は、急に立ち上がる。



加州「やる気…無くしちゃった。」

『えっ…💦』

大和守「もう…清光!いちいち、いじけない!主が、困ってるよ!」

加州「お前は、五月蝿いよ!」

『えっと…こんな時は、どうしたら良いのか分からないんだけど…』



加州は、主の言葉を聞き、その場にしゃがみ込む。



加州「こう言う時は、相手の手を取って目を見つめてから笑顔を送ると良いんだよ。はい、やって見て。」



主は、加州に言われた通りにする。



『えっと…どうかな?ニコ』

加州「うっうん…誰にでもしちゃダメだよ…勘違いするから。恋の相手にだけすると良いよ。」

『なるほど…そうなんだ。』

加州「…何、書いてるの?」

『えっ…今、言われた事をメモしてるの。』

加州「はぁ💨そんな事を紙に書かないで体で覚えるんだよ。」

『でも、忘れそうだから…』

加州「あとは、服装と髪型を変えてみたら結構印象変わるよ。」

『どんな感じにしたら良いかな?』

加州「そうね…主は、いつも髪を下ろしたままだし、服も袴姿でしょう。たまには、着物で髪もアップにしてみたらどうかな?」

『私にできるかな…』

大和守「僕達が、やってあげるよ!」

『お願いします!』

大和守「清光、やるよ!」

加州「えぇ〜お前が、やってあげなよ。俺は良いから…」

大和守「はぁ💨言い出したのは、お前でしょう!ほら、やるよ!」

加州「はぁ💨俺嫌だよ〜。主が、誰かの為にキレイになるとかさぁ…」

大和守「もう、仕方がない。主…さっきのやつやって!」

『了解!』



主は、加州の手を取ってにっこり微笑みかける。



『清光、お願い。ニコ』

加州「うぅ…///
教えなきゃ良かった…。」



加州と大和守は、主のイメチェンを手伝う。



加州「よし!こんな感じかな。」

大和守「ちょっと…色っぽくしすぎじゃない?」

加州「そう?こんなもんでしょう。」

大和守「僕は、清楚な感じが良いけどなぁ〜」

加州「お前の趣向は、聞いてないんだよ!」

大和守「うぅ…主、姿見で全身見てみて。」



主は、鏡で全身を見てみると顔はバッチリメイクをされ着物姿で髪はアップにされている。だが…首筋、うなじが、ガッツリ開いており…胸元も少し開けている。



『これは…』

加州「良いでしょう!いつもの素肌をさらけ出さない姿から今日は、大胆に肌けてます!」

『ちょ〜恥ずかしいんですけど💦///』

大和守「だよね。主は、やっぱり清楚な感じが良いよ〜。」

加州「うるっさい!!これで、良いの!ほら、さっさと見せに行って来なよ!」



加州は、主の背を押し部屋から出そうとする。



『ちょっと、待ってよ!こんな姿で部屋から出さないで〜!!』

加州「つべこべ言わずに出た、出た!!」



加州は、襖を開け。
主を廊下に出そうとした時、目の前に…三日月宗近登場。



『えっ…』

三日月「おぉ…主か、急に出て来たので驚いたぞ。はっはっは」

『うぅ…///』

加州「丁度、良いや。三日月、主を見て何か気づかない?」

三日月「ん?何がだ?」

大和守「ちゃんと見てよ!」

三日月「ほう…化粧をしているのか。綺麗だな…」

『あっありがとう…///』

三日月「だが…その装いは、ダメだな。まるで遊女のようだ。」

『えっ?ゆうじょ…?』



三日月は、無言で主の手を取り加州達の部屋より離れる。



『えっなに?…どこに行くの?』

加州「えっ!ちょっと…💦」

大和守「…なんか、怒ってない?」

加州「うん。かなり怒ってる感じだよね。」

大和守「やっぱり…」

加州「俺、心配だから見て来る!」

大和守「あっ!僕も行くよ。」



2人は、三日月達の後を追う。



『ねっねぇー痛いよ!』

三日月「…」



三日月は、自室まで主の手を引き部屋まで来ると主を中に押し込む。



三日月「何故、その様な装いをしているのだ?」

『…。』
(…声が低い。怒ってる?)


三日月「何も言わぬのか…。では、誰の為の装いだ?」

『えっと…いつも、同じ様な感じだから、たまにはイメチェンをしようと思って…似合わない?』

三日月「そうだな。若い娘が、この様に肌を露にするのは良くない。ここは、其方以外は、皆、男だ。分かっているのか?」

『うん…でも、可愛いって言って貰いたかったから…(小声)』

三日月「はぁ💨可愛いものか。この様な装いは男を床に誘う遊女の装いよ。」

『そう…だよね…。』

三日月「其方は、その様な事をしなくとも愛らしい。」

『…あい…らしい?』

三日月「ふむ…可愛いと言う事だ。」

『本当に!良かった〜。ニコ』

三日月「さて、いつまでもこの様な姿をしていてはいけない。俺が、整えてやろう。」



三日月の部屋の前まで辿り着いた加州と大和守だが、部屋の中から主達の話し声が聞こえてくる。



『も、もぅ…やめてよ!!』

三日月「いやいや、大丈夫だ。俺に任せておけ。」

『ダメだって!!無理にいじったら…あぁっ!!』



大和守「えっ…」

加州「主の艶っぽい声がするんだけど…」

大和守「まさか!…主の肌けた姿を見て、「遊女のような姿をしているのだから俺の相手をして貰おうか。はっはっはっ」なんて事に…」

加州「うそ…。ってお前、三日月の真似、似てないよ。」

大和守「そこは、気にしなくて良いよ!」



『宗近…本当に…もうダメだって。私…恥ずかしい///』

三日月「あと少しだ。恥ずかしいのも一瞬だ…。」



加州と大和守は、顔を見合せ意を決し三日月の部屋に勢い良く入る。



加州「三日月、主に酷い事しないで!」

大和守「って…これは…。」



中に入ると主は、裸に近い状態で着ていた着物で前を隠し床に座り込んでいる。その前に帯を手に持つ三日月が立っていた。



三日月「あぁ、二人か。すまないが、主に着物を着せてやって貰えぬか?」

加州「へぇっ?」

『清光〜!三日月が、着物を正すって言ってどんどん崩されて、こんなんになっちゃったよ〜💦私、自分で着物着れないし、三日月は不器用だし…全然ダメ。』

大和守「なんだ…そう言う事だったのか…はぁ💨」

『そう言う事って?』

加州「部屋の外で主の艶っぽい声がしたから三日月に襲われているのかと思ったよ。はぁ💨」

『おそっ!襲われてって…』

三日月「はっはっはっ、その様な事はせぬよ。」

大和守「あれ?三日月さん、少し変わった?前の三日月さんだったらこんな話していたらスケベな事をガンガン言っていたよね?」

三日月「主は、そう言う事を言う俺を嫌うのでな。もう、言わぬと決めたのだ。」

『そうなんだ…///』

加州「主、着物着るよ。立って。」

『うん…』

大和守「へぇ〜主の為に頑張ってるんだね。」

三日月「これ以上、嫌われて話すらしてくれなくなったら困るからな。」

『嫌いになんか、ならないよ!!』

大和守「ビックリした!」

三日月「そ、そうか…。ニコ」

加州「…主。急に動かないで。」

『あっ…ごめん。』

大和守「…。」

加州「ほら、出来たよ。」

『ありがとう。ニコ』

加州「じゃあ、俺達は行くから。」

『あっ!私もそろそろ近侍部屋に戻らないと歌仙に怒られる…。清光、安定。今日は、ありがとう!また、宜しくね。』



3人は、三日月の部屋より出て行く。



大和守「ねぇ…」

加州「…」

大和守「清光ってば!」

加州「はぁ💨主の好きな相手って…三日月だ。」

大和守「えっ…」

加州「三日月の事をずっと見ていたし…恋してます!って顔してた。」

大和守「そっか…清光が、不機嫌になったのはそのせい?」

加州「はぁ💨俺、嫌だ。主が、俺以外の奴と一緒に居て、そいつに飛びきりの笑顔を見せるなんて…」

大和守「…でも、主は幸せになれるんだから、その幸せを見届けてあげようよ。」

加州「…。」

大和守「不幸になる主の方が良いの?」

加州「良くない…」

大和守「でしょう?暫くは、僕が慰めてあげるよ。ニコ」

加州「お前、キモい!」

大和守「キモいってなんだよ!失恋したお前を慰めてやってるのに〜!」

加州「慰めて貰うなら主にして貰うよ!ニコ」



加州と大和守は、このあと部屋で失恋パーティーを2人だけで開催した。
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