みんながいたから今の私がここにいる…

□11 初期刀…
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小狐丸は、庭の木の陰から主の事をストーカー…ではなく見守っていた。



小狐丸(ぬしさまは…池の前でしゃがみ込んで、どうされたのでしょうか?)



『う〜ん…。』
((この庭の池って…どうなんだろう?日本庭園だから苔の生えた良い感じのわびさび?的な感じの池なのだろうか…))



主は、庭の池を見ながら悩んでいた。



『…汚れているようにしか、私には見えない。掃除したいなぁ…生き物も居なさそうだし…。でも、余計な事をして怒られたら嫌だな…どうしよう…。あぁ〜もぅ!悩んでいても仕方が無い!池の水抜いちゃえ!!』



数時間後…



『…これは…見事なヘドロです…。苔に見えてた緑色のやつは、ヘドロと藻でしたか…。よし!さっそく掃除開始!!』



小狐丸(…ぬしさまは、池の水など抜いて何をなさるおつもりなのでしょうか。)



『おりゃーー!』


小狐丸「ビクッ!!」


『私は、こんな泥になんか負けません!!』


小狐丸「…おっ驚きました。今度のぬしさまは、独り言がとても大きいのですね…。」



30分後…



『はぁ💨もぅ…疲れた…』



主は、池の枠の石に腰掛け、そのまま後に倒れ休憩をする。



小狐丸「はっ!?ぬしさまが、お倒れになられた💦」



小狐丸は、急いで主の元へと駆け寄る。



小狐丸「ぬ、ぬしさま💦」

『えっ!あっはっはい!!なっ何でしょうかぁ!?』



ゴンッ



駆け寄って来た小狐丸は、主の顔を覗き込むと急に大声で呼ばれた主は上半身を勢い良く起こし、主の額と小狐丸の額がぶつかる。



小狐丸「いっ…」

『いっ…たぁ…って小狐丸さん!だっ大丈夫ですか💦』

小狐丸「はい…私は…平気ですが…ぬしさまは、大丈夫でしょうか?」

『あぁ…かなり、おでこが痛いですが…だっ大丈夫ですよ。ニコ』

小狐丸「あの…額では無く…ご気分が優れなかったのでは無いですか?」

『えっ?何の事?』

小狐丸「今し方…此方に急に寝転んだでは無いですか。それまでは、池の前でしゃがみ込んで眺めていたり、急に池の水を抜いて見たかと思えば大きな独り言を言いながら池の中で大暴れしていましたよね。」

『…あの、ずっと私の行動を見てたのですか?』

小狐丸「はっ!」
(これは、不味い!私が、いつもぬしさまを、少し離れた所から見ている事がバレてしまうではありませんか!…何か…何か良い言い訳をしなければ…)


『…。』

小狐丸「これは…ですね…えっと…その…」
(駄目です!良い言い訳が何も浮かびません。これでは、ぬしさまに気持ちの悪い狐だと思われてしまいます!何か無いのでしょうか…💦)


『ありがとうございます。ニコ』

小狐丸「へっ?」

『私が、ヘマしないか見守っていてくれたのですね。』

小狐丸「…。」

『私、少し抜けてるから見ているのも大変でしたでしょ?いつ、ヘマをしでかすかハラハラしたんじゃないですか?』

小狐丸「いえ…私は…」

『ご苦労様です。ヘマしないように頑張ります!ニコ』

小狐丸「あの…気持ち悪いと…思われないのですか?」

『えっ?気持ち悪い?何でですか?』

小狐丸「…自分の知らない所で得たいの知れないモノに見られている事が…です。」

『…?小狐丸さんは、得たいの知れないモノじゃ無いですよ。私の大切な仲間です!!ニコ』

小狐丸「はぅっ!!」

『えっ?どうかしましたか💦』

小狐丸「はい…どうかしてしまった様です。ニコ」

『ん?』

小狐丸「この小狐丸。ぬしさまを、何があってもお守りすると心に決めました。」

『えっ?』

小狐丸「私は、あなたの刀…あなただけの…小狐丸です。ニコ」

『何か良く分からないのですが…ありがとうございます。小狐丸さん!ニコ』

小狐丸「…どうか、私の事をさん付けで呼ばないで下さい。」

『えっ…でも…。』

小狐丸「小狐丸…とお呼び下さいませ。」

『…小狐…まる…さ…ん。いや!無理です!神様をそんな風に呼べません!今まで通り、小狐丸さんでお願いします💦』

小狐丸「…そうですか。」



小狐丸は、明白に落ち込んだ顔をしていた。



『…ごめんなさい。』

小狐丸「分かりました。では、何れは、さん付けが無くなり小狐丸…と呼んで頂ける事を願っております。ニコ」

『…頑張ります。』

小狐丸「しかし、ぬしさまは、この池で何をなさっていたのですか?」

『池のね、水が汚れてるようだったので掃除をしていました。』

小狐丸「そうでしたか。何時も我々の棲みかを綺麗にして頂き、ありがとうございます。私も、お手伝い致します。」

『でも、汚れちゃいますよ?』

小狐丸「私は、こう見えて野良仕事なども、お手の物なのですよ。野性ゆえ。」

『では、お手伝お願いします。あと、池の掃除が終わったら一緒に買い出しに付き合って貰えますか?』

小狐丸「構いませぬが…。何か必要な物がおありなのですか?三日前にも買い物に行っていましたよね。」

『本当に小狐丸さんは、私の事を良く見てますね。三日前の買い出しは、誰にも言わないで独りで行ったのに。クスクス』

小狐丸「ぬしさまの事なら何でも知っております。ニコ」

『凄いですね!ニコ』

小狐丸「ぬしさまが、そう思ってくれる方で良かったです。ニコ」

『そうですか?えへへ』


小狐丸(この方の周りを包み込む様な空気は何とも心地良い物ですね…。ふわふわした気分になります。)


小狐丸「何をお買いになるのですか?」

『えっと…この池がキレイになったら鯉なんかが泳いでたら素敵だなぁ〜って思ったんです。だから、鯉を買いに行きます。』

小狐丸「分かりました。喜んで、お供させて頂きます。ニコ」

『ありがとうございます。ニコ』



主と、小狐丸は池の掃除を始める。
暫くすると、主はヘドロの中より固い物を発見する。



『何だろう?何か…固い物が…ってこれ包丁!?危ないですね。小狐丸さん、何かヘドロの中から包丁が出て来ましたので怪我しないように気を付けて下さいね!』

小狐丸「ぬしさま…」

『えっ?何で、そんな悲しい顔をしているのですか?』



主は、悲しい顔をしている小狐丸の側に駆け寄る。



小狐丸「その…刃物を…見せて頂いても宜しいですか?」

『はい。』



主は、小狐丸に刃物を渡す。



小狐丸「…これは、包丁では無いのです…。」

『えっ?じゃあ、何ですか?』

小狐丸「これは…この本丸の初期刀…加州清光と言う刀です。」

『えっ…刀って…でもこれ、先しか無いですよ?』

小狐丸「…くっ…。」

『…何で…こんな汚れた池に落ちているんですか?』

小狐丸「…すみません。これ以上は…」



ポロポロと涙を流す小狐丸を見た主は、これ以上この刀について話を聞く事は無かった。



『…小狐丸さん!少し休んでいて下さい。ニコ』

小狐丸「えっ…」

『涙が治まったら、また手伝って下さい!ニコ』

小狐丸「ぬしさま…」



小狐丸は、言われた通り池より少し離れた所で休憩をする。



((…この本丸には、悲しい事が沢山あったんだ…。前に、髭切さんが言ってた…膝丸さんが、前審神者さんに暴力を受けていたって…。鶴丸さんも無理やり体の関係を持たされていたって…。本当は、もっと沢山の仲間達が居たのかもしれない…。来たばかりの私が、根掘り葉掘り聞いて回って良い事じゃない。今、居る五振りの刀の神様達の心の傷を抉るような事をしちゃ駄目…。もしかしたら…いつか…前にあった事を打ち明けてくれる日が来るかもしれない。それまで…そんな日が来るまで…待とう。))


『加州清光さんかぁ…。あなたが、今何故こんな姿になっているのか…私には全然分かりません。…ですが、私達、人があなたを傷つけたのであれば…いつか…あなたに償える日が来る事を願っています。…ごめんなさい。』



主は、涙を流しながら刀の欠片を集め、持っていたハンカチに包む。
掃除を初めて数時間が経ち掃除が終わる。



小狐丸「綺麗になりましたね。」

『はい!では、池に水が溜まるのを待っている間に買い物を済ませちゃいましょう!』

小狐丸「はい。」

『じゃあ、着替えたら正門前に集合です!』

小狐丸「はい、分かりました。…ぬしさま、その様な包みを先程まで持っていましたか?」



部屋に戻ろうとする主の手には、加州清光の欠片が入ったハンカチを持っていた。



『あっ…はい。たっ…足袋が泥々になってしまったので、手で持つよりハンカチに包んで持って行った方が泥が床に落ちないかなと思ったので包みました。』

小狐丸「???」

『私…先に行きますね。』

小狐丸「あぁ…はい、分かりました。」

(…初めから足袋など履いていなかったと思いましたが…。)



この後、二人はよろず屋で鯉や鯉の餌を買って池に放つのでした。
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