散歩道
□金木犀
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「おぅ!名無しさんちゃん!」
名無しさんを見つけて手を振って近づいた。
今日の名無しさんはいつもよりラフ…というよりロックな服装で何やら気怠そうな雰囲気を纏っている。
「なんや、今日はえらい、かっこええなぁ〜。パンクロッカーみたいやん。」
「へ?あぁ。確かに。でもこういう服装好きだし、大体こんな感じですよ。」
なんや、この冷めたリアクション。
でも、こうして誘いに付き合うんだから機嫌が悪い訳でもあらへんのか?
まぁ、ええか。
「ほな、行こか〜!」
と、名無しさんの手を取ろうとしたものの、スッとかわされ、空振りしたではないか。
…?なんや調子狂うなぁ。
それでも焼き鳥を目の前にした名無しさんは、まってました!と言わんばかりに笑顔が戻り美味そうに頬張る。
「なぁ名無しさんチャン、なんかあったんか?」
そう尋ねても
「別に何もないですよ。」
とアッサリ返される。
「今日は飲まへんのか?」
そう問うてみた。
「あ、ちょっと今日は飲む気分でも無いんですよ。まぁね…一応女の子なんで。ちょっと今日は殺気立ってるかもしれません。」
「ふぅーん。……!?」
まて、それは今公表する事なんか?
いや、公表するって事はそれだけ気を許してるんか?
いや、でも。
「しかし、そないツンツンした名無しさんチャンもなんか唆られるわぁ〜!」
「………真島さん?神経逆撫でしたいんですか?」
「どやろなぁ?ま、飲まんのなら、好きなだけ食べたらえぇわ。」
なんだか、いつもは直ぐに照れて此方を見れなくなる名無しさんが
今日はしっかりと顔を向けて、
ジッと睨むのもまた、それはそれで可愛いと思えた。
これがギャップというヤツなのだろうか。