その男狂犬につき。
□都会の喧騒
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はぁ。早く時間が過ぎないかなぁ。
そんな事ばっかり考えて仕事をこなす。早く帰りたい。
やっと退社時間を迎え、急いで自宅に帰る。
いつもより入念に化粧と髪の毛を整えて、ガラにもないワンピースとロングブーツに真っ赤なコートを羽織る。
「真島さん!これから家でるんで下に着いたらワン切り入れますね!」
そう言って電話を切り、この前用意しておいたプレゼントを持ち颯爽と神室町へ向かう。
真島さんにワン切りする前にもう一度身なりを整えてチョット恥ずかしい気もするが昨日のサンタ帽子を頭に被ってみたりして。
通り過ぎる人々もクリスマスとあって、私の事チラッと横目に微笑んでくれる人もいる。すると、携帯が鳴る。真島さんからだ。
なんだろう?と思って出てみる。
「もしもし?どうしたんですか?」
「あんなぁ、どうやら俺の普段の行いが余りにえぇからかなー、サンタが来たらしいわ。」
「へ?普段の行い?……?」
「せやねん。サンタが居るねん。」
あれ?声がなんか反対の耳からも聞こえてる?と思ってそのまま振り向く。
「な?俺の目の前に、ごっつ可愛いらしいサンタが居るやろ?」
そう言って真島さんは私の目の前に居る。
いつもの蛇柄のジャケットじゃなくチャコールのスーツにワインカラーのシャツと黒いネクタイ。
「お名前、めちゃくちゃ可愛ええ。」
そう言ってギュッと抱きしめる。
ふわりと煙草と香水の香りがして、真島さんの匂いに包まれまれてポーっとしてしまうが、手に持っていた物を思い出して、真島さんに差し出す。
「メリークリスマス!サンタからのプレゼントをどーぞ♪」
「お、おおきに。…さ、行こか。」
なんだか照れ臭そうに手を差し出す真島さんだったが、その手を取り神室町へ繰り出す。