その男狂犬につき。
□出会い
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「えっと…真島さん…ね。」
そう言って携帯に登録してビールのお代わりを要求する。
真島さんは何やら考え込んでいるとおもったらニヤリと微笑えんでからポケットからタバコを取り出した。
「なぁ、火貸してくれんか?」
そう言われてライターを手にしようとしたら手を抑えられくわえ煙草のまま真島の方を見ると…
「そのまま火移るまで動くなや。」
そう言って私のタバコの火種に自分のタバコを押し付けた。
ち、ち、近いっ。顔が近すぎるっ‼
思わぬ至近距離に目を見開いたまま伏し目がちな真島の顔に魅入られた。
奇抜な服装の割に端正な顔立ちをしてる…
すると先程までは伏し目がちだったのにじっと見つめ口角を上げている真島が飛び込んできた。
精一杯の冷静を装いビールに口をつけるがなにやらニタニタとこちらを見ているではないか。
自分でも顔が赤くなってる事位わかる。それを酒のせいにしてしまおうとビールを煽る。
それを見て真島も酒を煽る。
するとお名前も煽る。
もぅ何杯目だろう。結構な酔いが回っている。
「真島しぁん、ワザとやってますぅ?」
「なんや、随分と可愛らしく喋るやないか。」
「ふぁっ?誰が可愛いってぇ?その隻眼、腐ってるんじゃないですかぁー?」
「うっさいわボケぇ。ワイわ嘘は吐かんねや。どあほぅ。」
呂律の回らない口調で頬を赤らめてこちらを見ているその姿にドキリとしたなんて口が裂けても言うまい。
「そろそろタクシー呼んだってママ。1人は寝てるし1人はだいぶ出来上がっとるからのぅ。
南、お前も帰ってええぞ。ワシはちょっくら散歩しながら帰るわ。」
そう言ってタクシーが到着するとエリを先ず返し、次を待つ。
「あ、真島しぁん。私、お名前。
お名前ですから。」
「あ?あぁ、お名前ちゃんやな。
また飲みたなったら電話でも掛けたらええわ。俺も飲みたなったら電話するわ。ほな、ちゃんと布団で寝るんやで!」
「ありがとうございましゅ。」
ペコリと頭を下げてタクシーに乗り込むお名前を見送る。
フラフラと神室町を歩き出す。
鼻歌交じりにご機嫌な様子で朝に溶けていった。