第五人格

□あなたに感電死
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※ハンター夢主、オリキャラの登場があります



「ルーカーくん!」


ルカくんの両肩に手を置いてぴょん!と背中越しに顔を出す。この至近距離、間違いなく彼の心臓はドキドキと忙しなく跳ね回っている筈だ。…物理的に。けれど心理的には全く効いていないらしい。ルカくんはいつものポーカーフェイスで機械弄りに没頭しているのでしん、と静まり返った空気にいそいそとルカくんから手を離す。しかしショボンと肩を落としたのも束の間。手元から視線を動かさずに、ルカくんが「君は今日も元気だな」と呟いたのですかさず反応して満面の笑みが溢れた。


「ねぇねぇルカくん、ここ押してみてっ!」


言いながら、ルカくんに向かってグーにした右手を差し出すと漸く彼の視線がこちらを向いた。私の右手の甲には、黒いマジックで「押して」と書いてある。ルカくんの人差し指が遠慮がちにそこに触れたのを見計らって、今度は「ひねって」と書かれた自身の人差し指をすっと伸ばした。必然的ではあるものの、ルカくんにギュッと指を掴まれたのに一瞬ドキ、としたりして。そのまま手をくるんと反転させる。次に現れたのは「ひっぱって」の文字。私の指を握ったままキュ、と軽く引っ張られたのに私の心臓もキュウキュウと音を立てて軋んだ。は〜、好き!締まりの無い顔でニヤニヤしながら、わたしはパッ!と勢いよく残りの指を開く。人差し指以外の指の腹には、それぞれ英語のスペルが散りばめられていて。L・O・V・E…順番に繋ぎ合わせてそのメッセージに気付いたらしいルカくんが、一瞬呆気に取られた顔をしてからふっ、と口元を緩めて再び自身の手元へと視線を戻した。わ、笑った〜!一方私は、ルカくんの柔らかい笑みを目の当たりにしてトキメク。ルカくんが笑ってくれた!嬉しい。

どうしてもルカくんに私という存在を意識させたくて、少しでもドキドキして欲しくて。常日頃からあれこれ仕掛けているけれど、なんだかんだ笑ってくれたのは初めてかもしれない。いつもは大体無視されちゃうもんなぁ。遠い目をしながらいつかの記憶を遡る。ルカくんルカくん!オテテ貸して!訝しげにしながらもすっと手の平を向けてくれたルカくん。ニコニコ顔でそこに自分の手の平を重ねる。…じゃっ、かん私の方が大きいだろうか。そこはハンターとサバイバーの差なので仕方ないと言えばそうなのだけれど、気にしても切なくなるだけなので深く考えるのは取り敢えず止めて。私はそのままルカくんの指を絡め取るなり、ギュッ!と握り締める。キョトン。ルカくんの丸められた瞳が静かに私を凝視した。


「へへ、ドキっとした?」


そう笑いかけてみるものの、ルカくんには軽く振り解かれるなりフイっと外方を向かれてしまいガーン!となる。


「むっ、無視しないでぇ!」


思わずルカくんの腰あたりにしがみ付くと、彼は一瞬不敵に笑ってみせてから私の方を振り返って。私の両手の平を捕まえながらさっきの私と同じ様にギュッと、握り締めた。…ドキっとしたかい?なんて、おうむ返しで聞きながら私の顔を覗き込んだルカくん。細められた瞳から溢れ出る色気に当てられて心臓が途端に暴れ回る。ドキ、どころではない。バクバクだ、!思わず赤面して固まる私を、ルカくんは可笑しそうに笑いながら見ていたっけ…。なんて、不意打ち喰らったあの日の事を思い出してもう一度赤面。世の中には吊り橋効果という物があるらしい。私はハンターだし、サバイバーを必然的にドキドキさせる事が出来るからそれを利用して恋に落とそうと思うのに。何故かドキドキさせられるのは私の方ばかりなので参ってしまう。本当に、なぜ…。ため息混じり、私は相変わらず機械弄りに没頭する背中をただじっと見つめていた。



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