第五人格

□迷子なのはどちらか
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※ハンター夢主



マイクは最近荘園にやって来たばかりの新人くんだ。まだゲームのシステムを把握し切れていないし、マップにも慣れていない為迷子になる事もしょっ中だった。そんな新人くんを相手に本気のゲームをするのは何だかアンフェアな気がして。カラスをつけながらマップの端っこをウロウロしているマイクを探し出してゲートまで送り届けてあげる。いつの間にかそんな習慣が身に付いていた。


「マイク!やっと見つけた」


今日のマップはホワイトサンド精神病院。ハンターの私ですら下手をすると迷子になってしまう、中々入り組んでいるフィールドなので、サバイバーである彼にとっては益々迷路の様に感じていたのだろう。病院内のかなり奥の方。歩き疲れてしまったのか、それ以上変に動き回らない方がいいと判断したのか。いつもの様にカラスを飛ばしながら小さく蹲っていたマイクは、私の姿を見つけるなりわあっ!と飛び付いてきた。その勢いに押されて少しだけ後ろに蹌踉めく。一人で心細かったのだろうか。私の事をギュウギュウと抱き締める力は中々強く、上目遣いに見つめてきた瞳は僅かながら潤んでいた。


「よしよし、もう大丈夫。迎えに来たよ」


一緒に帰ろ、マイク。と言っても、私はゲートの前で見送る事しか出来ないのだけれども。マイクはコクンと嬉しそうに頷いて私の手を握り締めるので、まぁそれでもいいかと思ってしまうのだ。

マイクがいる時の私は毎回優鬼だと他のサバイバー達も把握している為か。マイクを除く他のメンバーは速やかに解読を終えて出て行くのがルーティン化してきたのもあり、今回も私がマイクを見つけ出した頃には彼と二人きりだった。どっちのゲートが近いかなぁと見据えている間にも、マイクが早く早くと私の手を引くのでハッと集中力が切れる。


「あ、うん…」


あれ、いつもは私がマイクの手を引いてゲートまで連れて行くのに。今日はいつの間にかマイクに主導権を握られており、気が付けばこっちだとマイクに手を引かれていた。しかもきちんとゲートの方へ向かっている…。道、ちょっとは覚えられたのかな?少し違和感を覚えたものの、大して深くも考えなかった。


「ねぇ、マイク」


うん?と軽い調子でマイクが首を傾げる。普通に繋いでいたハズの手が、気がつくと恋人繋ぎにされていて少しばかり驚いた。しっかりと絡み付いたマイクの指が、すり、などと。愛おしげに私の手の甲を撫でるのでゾワリとする。無意識のうちに唾を呑んで目を泳がせれば、不意にマイクが足を止めた。薄暗い病室内。幾つか並んだベッドの前で、マイクは無言で立ち止まっている。


「…?どうし、」


言い掛けた言葉が途中で止まり、視界が突然反転したのに息を飲む。マイクに足を払われてバランスを崩した私は、そのままベッドに雪崩れ込んで押し倒された。2人分の重みを受けたベッドがギシギシと悲鳴を上げている。目を見開き狼狽する私の上では、マイクが薄ら笑みを浮かべながら覆い被さっていて。捕まえた手首をシーツへと縫い付けていた。普段の、人懐っこくて可愛らしくて、屈託の無い笑顔とは全然違う。ギラつくその眼差しは間違いなく、熱を孕んだ男の人の物だった。ヒヤヒヤ、どくどく。血の巡りが早い。段々と血の気が引いて指先の冷えていく感覚がした。


「なに、を、」


なんて、愚問だっただろうか。マイクの指先が私の唇に触れて静かにと訴える。つい黙り込んでしまうと嬉しそうに口の端っこを吊り上げながら笑って、マイクはゆっくりと私に顔を近づけた。まるで笑い声を押し殺した様な声で、ほんとう無防備だよねとわざと耳元で囁かれる。ゾク、と背中を震わせる私を抑え込みながら。マイクは恐ろしく柔らかい口付けを交わし私の服に手を掛けた。



20210120

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