Happy birthday to Hijikata
□腐れ縁
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俺は少し休んだ後、ようやく総悟を見つけ、見回りを再開した。
「あ、土方さんに沖田さん。今日も見回りですか?」
前から歩いてきたメガネに話しかけられる。
「それ以外に何があるってんだ。」
総悟に逃げられてイライラしていたせいでぶっきらぼうな答え方になる。
「で、ですよね……。 沖田さん、土方さん怒ってます?」
「原因は分からねぇが、ったく、土方さんは短気でいけねーや。」
「どー考えてもお前のせいだろ、総悟。」
「え、俺なにかしましたっけ。」
「お、沖田さんそれ以上は……!」
「てめぇ、総悟……!」
俺が総悟に掴みかかろうとした時。
「あ、ひ、土方さん!!! こ、これ!さっき寄ったスーパーで特売だったんでいつもより多く買ったんです!!よかったらどうぞ!!」
そう言ったメガネは、袋からマヨネーズを取り出す。
「てめぇ、マヨを俺の気を沈めるために使うんじゃねぇよ。……だが、しゃーねぇ。貰ってやらぁ。」
自然に総悟のことは忘れていた。
「もちろん喧嘩を避けて欲しいのはありましたけど……。何だかんだ、僕たち万事屋は真選組にお世話になってますから。 プレゼントとして受け取ってください。 おめでとうございます、土方さん。」
「おめでとうって……、あ、あぁ。 ……ありがとよ。」
では、と言ってメガネはその場を去っていく。
ちっ、と近くで舌打ちをした音が聞こえた。
「なぁ、総悟、おかしいと思わねぇか。」
「なにがですかぃ。」
もう夕方になり、そろそろ今日の見回りを引き上げようとしていた頃に、とうとう俺は総悟に尋ねた。
「なんですれ違うヤツら揃って俺の誕生日知ってやがる。」
「そうでしたかねぃ、土方さんの自意識過剰じゃねぇですかぃ。」
「んなはずねーよ。チャイナ娘にメガネ、あいつらなんかは物までくれやがった。今まで絡んだことのねぇ名前すら知らねぇやつにも言われんだぞ。ぜってぇなにかある。」
「あららー、土方さん、まぁたなにかに魂乗っ取られやしたかぃ。」
「あ?!い、いや、そんなことねぇよ、そんなことねぇはずだ……。げ。」
こんな時に限って……!
『なんでてめぇがいんだよ……。』
「それはこっちのセリフだ、V字ハゲ。」
「いや、俺のセリフだ、クソ天パ。」
ったく、ただでさえわけわかんねーことが起きてるっつーのに……。
なんでこんなやつと。
正面から歩いてきたのは万事屋だった。
「ったく、普段から連休みてぇな生活してるくせにさらに
腑抜けた顔しやがって。ちったぁ働けってんだ。」
「あぁ?!俺だってちゃんと仕事してますぅ!!馬鹿にすんのもいい加減にしろよ、税金ドロボー!!」
「一般市民が休んで浮かれまくってる時にこっちは仕事してんだ、ちゃんと給料に見合うことはしてんだよ!」
「一般市民だってなぁ、普段汗水垂らして働いてんだよ!」
「てめーが言うなよ、普段もくそもねぇくせに。」
あぁ?!と、万事屋が詰め寄ってくる。
毎回こうやってケンカをしてしまう。
旦那ぁ〜、土方さん〜、いい加減にしてくだせぇよ〜、という総悟のかったるそうな声ではっと我に返る。
『ちっ、』
お互い背を向ける。
「あー、もー!!」
コンッ
万事屋の声がしたかと思えば背中になにか軽いものが当たった。
「おい、てめぇまだなにか……!」
「今はそれしか持ち合わせちゃいねーよ、残念ながら。たまには糖分摂取しやがれ。あと、すぐ俺も追いつくからな!」
振り返った時には、万事屋は背を向けて歩き始めていた。
足元を見ると、地面にアホロが転がっている。
「誕生日おめでとう……?」
さらにそれには万事屋の手でそう書かれていた。
「おい、これ……!」
そう言いながら顔をあげた時には万事屋の姿はもうなかった。
おめでとうって書いてあるってこたぁ、ヤツはもともと俺の誕生日を……?
余計なことばかり覚えてやがる。
ふっ、と俺は少しだけ笑って一粒アホロを口に入れた。
「……やっぱ甘ぇ。」
まぁ、でも、たまには甘いもんも悪かねぇか。
そんなことを考えながら、もう屯所に帰るだけだと思って上着を脱ぐ。
「ん……?」
今脱いだ時に背中に白い線が見えたような……、
隊服を広げてみると。
「今日が誕生日です。祝ってください。(本人に背中に書いてあること言ったやつどうなるかわかってるよな)」
「………………そう、ごぉ……。」
やべっ、と言って総悟は走り出す。
やっぱり変だと思ったぜ……!!!
すべてこの落書きのせいかよ……!!!そしてこんなことするヤツぁ……、
「総悟てめぇ許さねぇーーー!!!!!」
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