Happy birthday to Hijikata

□今日は
1ページ/1ページ




「もうこんな時間か……」


障子から差し込む朝の光で目が覚めた。
昨日、いや、正しくは今日、寝たのはおよそ2時間前。



世間が休みだと浮かれ、あちこちで何か催し事をしている時ほど俺たちの仕事は忙しくなる。


ったくヤツらはみんな暇なのかよ。

ちったぁ汗水垂らして働いてるこっちの身にもなれってんだ。




かく言う今日も一日通しての見回りが入っている。

遠いところは隊士に任せて、俺はかぶき町辺りで済んだのがまだ救いだった。





ぼーっとしながら着替える。

誰が悲しくてこんな休日に朝っぱらから仕事しなきゃならねーんだ……



ふぁ〜、と、隊士たちの前では見せられない気の抜けたあくびすらしてしまう。



「この世間のどんちゃん騒ぎが落ち着くまであと2日だ……、頑張れ十四郎……、」




気合いを入れ直すようにバッ、と勢いよく上着を来て、部屋を出た。









「副長、おはようございま…………!お、おめでとうございますーーーー!!!!」



「……山崎、なんで土下座してんだ、出会い頭に。疲れで頭イカれたか。いや、イカれてんのはいつもか。」



食堂に朝食を食いに行く途中、後ろから声がしたので振り返ると土下座した山崎がいた。



「いつもってな……!い、いや、そんなことよりおめでとうございます、副長!!!」


「だーから、なんの事だよ。なにがおめでとうなんだよ、てめぇの頭か。」


「ち、違いますよ!え、もしかして副長気づいてない……?」

「あ?なにが。」

「よかった……」

「何がよかったんだ山崎、吐け。」



「い、いや、なんでもないです、独り言です!!そ、それより副長、お誕生日おめでとうございます!!」



「誕生日……?」




「そうですよ!お忘れですか?今日は副長の誕生日でしょ!」


「……」


今日は……、あぁ、五月五日。




「忙しかったですもんね、副長のことだし、忘れるのも無理はないか。とりあえずおめでとうございます。」


「あ、あぁ……、ありがとよ。」




こいつ俺の誕生日覚えてたのか。



「用はそれだけか。」

「え?あ、は、はい。」

山崎が少し目を丸くして答える。




自分の誕生日なんぞに興味はねぇ。

それよりも早く飯を食って見回りに行かねーと。



面倒なもんは起こる前に防ぐのが効率的ってもんだ。



俺はすぐ頭を切り替えて食堂に向かった。








その後も、隊士たちの様子が変だった。




ヤツらは出会い頭に、副長、おめでとうございます!と言ってきて、少し気味悪い感覚さえ覚えた。




だがそう言ってくるやつらは揃いも揃ってなにかにビビっている様子だった。
次の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ