〈長編夢小説〉幸せ
□第九章
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そしてその次の日から土方さんは徐々に仕事を再開した。
完全に復帰してからは、なまった感覚を取り戻そうとしているのか、また忙しそうに毎日を過ごしていた。
真選組自体も私もなんだかんだ忙しくて、結局総悟君との約束を果たせたのは、土方さんが元気になって一か月ほどたってからだった。
「やっと出かけられましたねぃ。」
「ほんとだね。みんな忙しかったしね.......。」
ようやく一息付けてなんだか幸せを感じる。
こんな幸せの感じ方、前の世界ではあんまりなかったなぁ.......。
「ここでいいんですかぃ。」
「あ、うん!いいよ! ごめんね、いきなり付き合わせちゃって。」
「構いませんぜぃ。」
そう、二月の中旬.......。
もうすぐバレンタインデー。この世界にもあるのは驚いたけれど。
男しかいない真選組だからきっとチョコとか喜ぶよね。
「何買うんですかぃ。」
「チョコレートだよ。楽しみにしててね。」
「え、名無しさんさんの手作り食べれるんですかぃ。そりゃぁ楽しみだ。」
「で、でも、あんまり期待しすぎないでね!!」
「いやぁ。きっとおいしいでさぁ。」
「わざとプレッシャーかけてる......?」
「そんなことありませんぜぃ。」
そう言うけど絶対楽しんでるよな......。ちょっと緊張する。
「ありがとうございましたー」
私の仕事の量が増えてからというもの、私も一応お給料として自由に使えるお金をもらっていた。
総悟君が払うと言ってくれたけど、私が買わないと意味がないから、と言って自分で買った。
「総悟君、はい。付き合ってくれたお礼。」
「俺に?」
「うん。ちょっと早いけど。もちろん、みんなにあげる時にも、総悟君の分も作るから大丈夫だよ。」
「ほんとですかぃ。こりゃぁ嬉しいや。」
あ、久しぶりに見た。総悟君の幼い顔。かわいいな。
「じゃー、そろそろお昼でも食べる?」
「いいですねぃ。」
そう言って機嫌がさらに良くなった総悟君と歩き始めた。