〈長編夢小説〉幸せ
□第八章
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名無しさんは二日間、ほとんど付きっ切りで俺の看病をしてくれた。
俺が寝ている間にあいつも休んだりしていたようで、昨日あったくまもなくなっていた。
「んー、だいぶ下がりましたね。さすがです。」
一昨日帰ってきた時と比べると、だいぶ熱は下がっているらしい。
だが侍として二日間も寝込んでいること自体、恥と感じてしまう。
「じゃぁ、もういいだろ。どこも悪くねぇよもう。」
せめて書類書くくらいはしねぇと.......
「何言ってるんですか!治りかけが大事なんです!近藤さんに、明日までゆっくりさせろって指示されたので!近藤さんから!」
近藤さんから、を強調して名無しさんは言う。
こいつ、俺の弱みに付け込みやがって...
そう思いながらしぶしぶ布団に入る。
「.......っつ、」
くそ、喋るのはもう問題ねぇがまだ頭が.......。
「ほら、急に動くから.......。はい、寝てください。」
名無しさんが布団をかけてくれる。
「なんにも仕事してねぇと気持ちがわりぃんだよ。」
「すごいですね、その感覚.......。
でも、休むことも覚えてください。」
あきれているのか心配しているのか、困っているのか.......、そんな顔で名無しさんは言う。
「じゃぁ、私そろそろ戻りますね。仕事、しないでくださいよ。」
「わかってるよ。」
「.......私、知ってますからね、いない時起き上がってたの。」
「げ.......。」
「土方さんがいろいろ心配するのもわかりますけど.......。ちょっと良くなったからってほんとにだめですから!」
「.......ったくわかったよ。」
「じゃぁ.......、おやすみなさい。」
そう言って名無しさんは立ち上がり部屋を出て行こうとする。
「.......おい。」
「はい?」
「なんだ、約束って.......」
無意識にそんなことを口にしていた。
「約束?」
「あぁ、昨日、言ってたろ、総悟。」
「総悟君.......、あ、それは、今私が土方さんに看病でつきっきりだから、土方さんが元気になったら、今度は二人で町に出かけようね、って話です。」
あぁ、だからあいつ早く俺に元気になれって.......。
「そうか。」
「どうかしました?」
「いや、何でもねぇよ。」
「.......わかりました。おやすみなさい。」
「あぁ。」
なんで聞いたんだ俺は。
別に総悟とあいつが何を約束したかなんて、いや、なんで総悟が変に優しいのかあいつに聞いたら分かるかと思ったからだ。
今までだって総悟はあいつと出かけてただろ。それは今更気にすることじゃねぇ.......。
でもあいつは、総悟とどんな話を.......
「っ、いってぇ。」
この頭痛がなかなか治らねぇのは風邪のせいだけじゃぁねぇ気がする.......。