〈長編夢小説〉幸せ
□第八章
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お正月もすぎてようやく落ち着いてきたのはもう日付が二桁になってからだった。
そんなある日。
「名無しさんさん、今日、土方さん達、ずっと追っていた奴らのしっぽ捕まえたみたいで、そいつらを取り締まりに行ってるそうです。
だから帰りが遅くなる、と連絡がありました。」
「そうですか。ありがとうございます。」
最近忙しくてまともに休んでないけど、土方さん、大丈夫かなぁ.......。
もう十時になろうかという頃、取り締まりに行っていたみんなが帰ってきた。
すぐ休めるように、もう寝る支度をしておこう。
そう思いながら土方さんの部屋で用意をしていると.......。
「あ、おかえりなさい!土方...さん?」
土方さんは部屋に入ったところで私を見て一瞬立ち止まり、それから少しふらふらしながら私の方に近づいてくる。
目はうつろで、でもなんだかどきどきさせられる目をしている。
「土方さん、どうしました.......?」
声をかけても返事はない。
捕まえた人たちと少し争ったのだろうか、頬にはガーゼが貼ってある。
そして、彼は私の方に近づいてきて、とうとう私は壁まで追い詰められた。
トンッ.......
私の頭の横に手が置かれる。
少し顎を引いて私を見る目つきはさらに私の心拍数を高まらせる。
「ちょ、土方さん、どうしたんですか.......!!」
どんどん顔が近づいてくる。
え、うそ・・・!!
あれ?
突然視界から土方さんの顔が消えた。
その代わり右肩に少し重みがある。
土方さんは私の肩に頭を乗せていた。
よく見ると、彼は肩で息をしていてとても苦しそうだ。
もしかして.......!
「土方さん、熱あるんじゃないですか?!」
そう言って彼の体を起こし、額に手を当てる。かなり熱い。
もう、最近休んでないから.......!!
「土方さん、早く横になって!」
土方さんの体を支えながらなんとか布団に寝かせる。とても苦しそう。
まだ隊服のままだし.......、仕方ない。
「土方さんごめんなさい、ちょっと胸元開けますよ!」
彼の上着と隊服のベストを脱がせ、シャツの第二ボタンまでを開ける。
これでちょっとは楽になるかな.......。おしぼり持ってこよう。
「ちょっとおしぼり持ってきますから!待っててください!」
そう言って立とうとすると。
着物の裾が引っ張られる。
「行く...な...。」
「.......!」
あー、だめだめ!顔を赤くしてる場合じゃない!
「大丈夫ですよ、すぐに戻ってきます。そのあとはずっとそばにいますから。」
そう言うと彼はそっと手を離した。
そして私は部屋を飛び出して、看病に使えそうなものを取りに向かった。