〈長編夢小説〉幸せ

□第六章
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「起きてるか」



この声は土方さん? もう着物の着付けもないしどうしたんだろう朝一に。


あ、もしかしてお仕事のこと.......!


「起きてます!すみません!!」


慌てて自分から障子を開けると。


「なにがだ。」

「え? あ、いや、お仕事かと.......」

「あぁ、ちげーよ。まだなにも伝えてねぇじゃねぇか。」

そう言いながら土方さんは笑う。

「よ、良かったぁ.......。土方さん怒ると怖いから。」

「何か言ったか。」

「な、なんでもないです!! それよりどうしたんですか?」

「朝飯食いに行くぞ。」

「え?」

「お前はきちんと仕事もこなしてるし、隊士達との関係も悪くねぇ。
そろそろ連中と一緒に飯食っても大丈夫だろ。
近藤さんには許可貰ってある。」

「ほんとですか!」



一応一度疑われている身。

たぶん土方さんは、
私がなにか企んでいたら隊士たちに毒を盛ったりするかもしれない、
そういうことを考えていたんだろう。


でも、それが許されたってことは、ちょっとずつ信じて貰えるようになってる、って思っていいのかな。

とっても嬉しい。

「あぁ。行くぞ。」

「はい!」



あ、そう言えば。



「土方さん?なにか気づきません?」

「あ?」

「私を見てなにか気づきません?」

「.......着物だろ。似合ってる。」

「あ、ありがとうございます.......」



二人とも顔を少しだけ赤くしながら食堂へ向かった。







でもさすがにちょっと緊張するな....。


いつもは一対一、もしくは二、三、くらいの隊士としか関わったことがない。
こんなにいっぱいいると.......。



食事を受け取り
(食事担当の隊士さんはびっくりしていたけど、土方さんがいたからだろう、大きなリアクションはしなかった。)
席に着こうとすると。



「おぉ!トシ! 名無しさんさん! こっちだ!」


近藤さんはそう言いながら私たちを手招きしている。
その前には総悟くんも座っている。


「近藤さん、総悟くん、おはようございます。」

「おはよう!
トシに、今日から名無しさんさんも食堂で飯を食べると聞いていたんでな、一緒に食べようと思って待ってたんだよ。」

「嬉しいです!ありがとうございます! あ、そう言えば近藤さん、昨日大丈夫でしたか.......?」

「あぁ.......、体の方はね、大丈夫なんだが、心が.......」

「名無しさんさん、大丈夫でさぁ、いつものことでぃ。」

「そ、そうご.......。」


涙目・・・。


「あー、もう近藤さん泣くなよ。総悟も言いすぎだてめぇ。」

土方さんもフォロー大変だな.......


「あ、局長! ん?皆さんお揃いですね。僕もここいいですか?」

そう言って土方さんの隣に座ったのは山崎さん。

「おはようございます、山崎さん。」

「おはようございます!」

そして、山崎さんをきっかけに、なんだか隊士さん達が近くのテーブルに座り始めてるような.......。




「そう言えば名無しさんさん、その着物、どうしたんですかぃ。よく似合ってますねぃ。」


「ほんと? ありがとう! これ、昨日土方さんが買ってくれたの。」



『え?』



同じテーブルに座っている隊士、近くのテーブルにいる隊士、みんな声を合わせてそう言った。


え、なんか良くない事言った.......?

そう思いながら正面にいる土方さんを見ると。


や、やばい、よくないやつ.......?


土方さんは、もう丼からこぼれているのに、ひたすらマヨネーズをご飯にかけ続けている。



「ほんとかトシ?!」

「副長が?!」

「え、副長が!」

「まじかよ」

「死ね土方」

「どうしたんだ副長.......」

「また妖刀の呪いか?」



「おい、誰だ今死ねって言ったの!切腹だ!」




大変な騒ぎになっちゃったやばい...!

近藤さん、山崎さん、総悟くん(は、言い過ぎだけど・・・)ほかの隊士も、みんな驚きを隠せていない。



「あ、あの.......」

どうしよう.......!!


「ちげーよ、その場では俺が買ったが、金は真選組の.......。」

「え?副長、
今朝も確認しましたが特にお金の変化はなかったですけど.......」

「おい!てめぇ、空気読め!!」


そんな土方さんを見ながらみんな笑っている。
土方さんには申し訳ないけど.......


なんかみんな楽しそうだからいっか!


「おい、名無しさん、てめぇ何笑ってんだよ!」

「いや、みんな仲良くていいなと思って.......、なんか安心しました!」

「なにがだよ.......。」



土方さんは呆れているけれど、
厳しいと恐れられる土方さんがみんなの笑顔の中心になっているのを見ると、私も嬉しくなるな。


「あーったく、名無しさん、後で部屋こいよ!仕事の指示をする!」


そう言って土方さんはすごい勢いでご飯を食べ終えると、早足で食堂を出ていった。
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