〈長編夢小説〉幸せ

□第一章
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真っ青な空。最後に私が見たのと同じ。天国も空は変わらないのね。


「・・・ん? 背中痛い・・・、固い。」


背中に妙な違和感を感じる。
ん?地面?天国の地面? 
だんだんと意識がはっきりしてくる。人?の話し声も聞こえてくる。


「ここほんとに天国・・・?」


そう言いながら体を起こすと。


「ん?家?」


なんだか昔ながらの木製の家が軒を連ねていて、そんな家と家の間の通路に私はいた。


「ここ、どこ・・・?」


これは天国じゃないよね?夢でもないよね?感覚あるし。
そう思いながら、定番の頬をつねってみるが・・・、

「い、痛い・・・」

どうしよう。夢なら一番いいが、せめて天国であってほしかった。
どうしよう・・・


「あ、真選組よ。あの人たちに知らせましょうよ。」

「そうね。副長さんとお話もできるし・・・」

「もう、何言ってんの。」


そんな話声が聞こえてきた。

「新選組・・・?」

え、あの歴史の授業で習った?あの人斬り集団??てことは幕末?まさか。


「おい、てめぇ、ここで何してやがる。」


やけに低い声と、荒々しい口調。
なんだかたばこのにおいもする。
恐る恐る声のしたほうを振り向くと・・・。

そこには黒い隊服をかっちり着こなした、二人の男の人が立っていた。


一人はすらっと背が高く、黒髪で、前髪がなんだか特徴的な、たばこをくわえた目つきの悪い人。


もう一人は、黒髪の人よりも若く、背が低い、栗色の髪をしたぱっちり目の男の人だった。


「おい、聞こえねぇのか。」


あ、さっきのはこの人なのね。
初対面なのになんて言う言葉遣い・・・


「土方さん、そんな荒々しい聞き方じゃぁ、びっくりしやすよ。ねぇ?おねぇさん?」


若い男の人(まだ男の子?)はそう言って私のそばにしゃがみ、笑顔を向けてきたけれど、目は笑っていない・・・。


「おねぇさん、やけに珍しい着物着てますねぃ。どこから来たんでぃ。」


確かに、今いるこの時代が幕末だとして。

(さっき土方さんとか言われてたし。てか新選組の中で一番怖い人じゃぁ・・・)

私の学校帰りのこの服装がこの時代に合っていないのは明らかだった。


「ぇえと・・・。」


どうしよう、未来から来たなんて言えないし。
それに絶対信じてもらえないよね。


「おい、どこから来たんだって聞いてんだよ。」


土方さんと呼ばれた人も私の近くにしゃがんできた。というかその口調。


「っと・・・、わかりません・・・。」

「はぁ?お前どこから来たのか覚えてねぇのか。」

「はい・・・。」

「じゃぁおねぇさん、お名前は?」

「名無しさんです・・・。」

「名前は言えんのか。じゃあ、記憶喪失、というわけでもなさそうだな。総悟、こいつ屯所に連れてくぞ。」


「え?なんでですかぃ。」


「たりめーだ。名前覚えてんのにどこから来たのかわかんねぇってそりゃあ不自然すぎるだろ。攘夷浪士の可能性もある。」


っじょ、じょうい,ろうし・・・?


「土方さん、おねぇさん、ポカンとしてやすが。」

「演技だろ演技。ほら、さっさと立て。」


そう言って土方さんは私の腕をつかみ、立ち上がらせた。


「いや、ちょっと待ってください、私なんのことかさっぱり・・・!屯所って何ですか!」


「あぁ?お前知らねぇのか?演技にもほどがあるぜ。」


そう言って連れていかれた先には・・・、パトカー???
え?ここ幕末だよね?
いやまだ受け入れたつもりはないけど!
パトカーなんてある?

しかもパトカーに書かれている「真選組」の文字・・・。
「しんせんぐみ」って、あんな漢字だったっけ?

てかあなたたちの服装もこの時代には不相応なんじゃないの?


「どうぞ。」


そう言ってドアを開けてくれた「総悟」と呼ばれた若い男の子は、私にパトカーに乗るよう、促した。
パトカーなんて初なんですけど・・・。
いや、パトカーなんてあるはずないし・・・。
というか何にも悪いことしてないのに!

どうなっちゃうの私・・・!!
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