〈長編夢小説〉幸せ

□第二章
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「おートシ。怪しいヤツをしょっ引いてきたっていうから来てみりゃあ、
人のよさそうなお嬢さんじゃぁないか。」


そう言って私の前に座ったのは、この真選組の長らしき人だった。

え、ここの長はゴリラなの・・・?


「近藤さん、あんた俺にいつも疑いすぎだっていうが、あんたは疑わなさすぎだ。
この服装からして明らかに怪しいだろうが。」


近藤さんっていうのか・・・。
あぁ、確か新選組の局長。

え、歴史の教科書にゴリラなんか載って・・・


「名無しさんさん、こう見えても近藤さんは人間ですからねぃ。ここの局長でさぁ。」


あ、あー、見えてきた見えてきた。うんうん。


「おい、てめぇ、マジでゴリラだと思ってたのか。」


私がうなずく姿を見て土方さんがすかさず突っ込みをを入れてくる。


「え、いや、そんなこと・・・」

「ハハッ、まあいいさトシ・・・」

涙ぐんでいる。

「ご、ごめんなさい・・・」


「大丈夫でさぁ。あんただけじゃねぇですぜぃ。」


なぜか「総悟」と呼ばれる人は私をフォローしてくれる。
なんだかおもしろがっているようにも見える。


「近藤さん、土方さん、早く本題に入りやしょうよ。」


「あ、あぁ。こいつは、かぶき町の路地裏にいた。
自分の名前はわかるが、どこから来たのかは分からないらしい。
俺ぁ、こいつは攘夷浪士か何かのスパイで、素性を隠すために記憶喪失を演じてるんじゃねえかと思ってる。」

「それはほんとかいトシ。」

「いや、だから俺の推測!!」

「ってこたぁ土方さん、この人、牢屋にぶち込むんですかい?」

「あぁ、一応疑われてる身だからな。」


ろ、牢屋・・・?


「いやトシ、それはちょっとかわいそうだろう。
まだスパイだと決まったわけじゃぁねぇんだ。
せめて空き部屋にしたらどうだ。まだ何もしていない、しかもお嬢さんだぞ。」

「・・・」


ゴリ、あ、近藤さん・・・


「そうでさぁ、土方さん。空き部屋もありますし、そこでいいんじゃねぇですかい。
たとえスパイだとして、この屯所から抜け出したりなんてそうそうできるもんじゃありませんぜぃ。」


え、逆に怖いんだけど・・・


「あぁもうわかったよ。じゃぁ、最後にもう一度聞く。お前ほんとに・・・」


イラッ。


「だから違いますって!どれだけ疑えば気が済むんですか!
 そしてあなた、初対面の人に対しての口の利き方が悪すぎま・・・あ。」


や、やばい。ついついたまってたイライラを吐き出しちゃった。
こ、殺される・・・?



「アーッ、ハッハッハッハッ!!」



近藤さんの大きな笑い声が響いた。・・・え?


「いやぁ、おねぇさん見事ですぜぃ。あの土方さんにいきなり物申せるとは、大したモンでぃ。」


土方さんは間の抜けたような顔をしている。


「いやぁ、面白くなりそうだな。じゃぁ改めて、俺は近藤勲。ここの局長だ。」


「俺は一番隊隊長、沖田総悟でさぁ。」


え、あの沖田・・。


「次は土方さんですぜぃ。なんでぃ、しねぇなら、俺がしてやりまさぁ。」


土方さんに返事をする暇も与えず沖田さんが話し出す。


「あの人は、俺は認めちゃぁいねぇが、一応副長で、ニコチン野郎で、ブイ字はげで、マヨラーで・・」


「もういい、うるせぇ総悟!」


沖田さんを止めた後、


「土方十四郎だ。」


彼はそう言った。
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