4年生
□1.マイペースな先輩の段
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「きゃぁぁぁぁ!!!」
ドサッそして、また………綾部先輩が掘った落とし穴に嵌まってしまった。
「おやまあ」
「…………綾部先輩」
「喜八郎」
「喜八郎先輩……」
毎回何故か、綾部先輩は私が『綾部先輩』と呼べば『喜八郎』と言い直されてしまう。あまり綾部先輩と呼ばれたくないのだろうか?
いや、特に嫌ではないはず。
だって、1年は組の乱太郎達は普通に『綾部先輩』と呼んでるし、それを綾部先輩は言い直したりはしてない。
………じゃあ、なんで??
「ちょっと端っこに寄って」
「え?」
端に寄れと言われても幅的に狭いんだけど………
でも、先輩なのでとりあえず言う通りに端に寄れば、綾部先輩が降りて来た。
その手には何か持っている。
「あの………あや……じゃなくて喜八郎先輩、その手に持ってる物はなんですか?」
「これは団子の包みだよ」
「団子の包み?…………あ」
綾部先輩に言われた後に、あっと昨日の事を思い出した。
「結局あのあとも探してみたけど、何故か見つからなかったからねー。紫が落ち込んでたから、僕が買いに行ってあげたんだよ」
と私に団子の包みを渡した。
「えっ!?わざわざ、買いに行ってくれたんですか?」
「そうだよー」
と無表情のままマイペースに答える綾部先輩
しかも、あのあともずっと探してくれていたなんて…………
「あ、あの………もしかして、くのいちのとこに来ましたか?」
ユキ先輩が言っていた怪しい人影がいたという話を思い出して聞いてみた。
「……さあねー」
はぐらかされてしまったけど、きっと綾部先輩だったんだろうなって内心でそう確信した。
「それで、綾部先輩」
「喜八郎」
は、はは…………
言い直されてしまった私は、再度名前で呼べば『なにー?』と振り返る。
「あの、どうして私だけ喜八郎先輩って言い直すんですか?」
「………んー」
「乱太郎達には綾部先輩って呼ばれても言い直しませんよね?」
「………キミには喜八郎って呼んでほしいからかなー?」
穴堀りのフミコちゃんを置いて、私の頭を撫でた。
「…………え、じゃあこの落とし穴は?」
「キミを捕まえるための罠」
……………え?
平然と答える綾部先輩だけど、その意味が全く分からないのでクエスチョンマークを浮かばせる。
「だって、落とし穴に嵌まったら何があっても逃げられないからねー」
「…あの、喜八郎先輩」
「………まあ、今回は逃がしてあげるよ。すんなりと捕まえても面白くないからねー」
どおっ!
本当にマイペースな綾部先輩にずっこける。
つくづくマイペースな先輩だなって思いながら、またもや差し出されるその手を掴んで引き上げてもらうのでした。
END
恋の予感を感じさせられたかなー?って思いますね!まあ、喜八郎がヒロインちゃんを好いてるって感じねww