4年生
□1.マイペースな先輩の段
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さて………
これから、私の先輩にお土産渡しに行くとするかな
任務を無事に終えた後、途中で通りかかった団子屋で先輩のユキ先輩達にお土産を買って帰ったのだ。
そしてくのいちに向かう途中に悲劇は起きた。
ザッ
………嫌な予感
地面に足を付けた時、妙に嫌な予感が私の脳裏に浮かんだ瞬間……踏んだ場所から土が抜け落ち
やっぱり!!
「きゃぁぁぁぁ!!!」
ドサッ「痛ぁ…………誰だって言わなくても………犯人は1人しかいない…」
見事に落とし穴に嵌まった私は、顔を手で覆ってため息を漏らした。4年い組の穴堀り名人こと穴堀り小僧と呼ばれた綾部喜八郎先輩だろう…
「おやまあ……キミはくのいちの3年は組の紫じゃないか」
「………綾部先輩」
「喜八郎」
「…………喜八郎先輩、また穴堀りですか」
上から顔を覗かせたのは、やはり綾部喜八郎先輩だった。
「それが僕の趣味だからねー」
とこちらに手を差し述べたのを見て、その手を取れば可愛らしい顔付きをしているのとは半面に凄い力で引き上げられた。
「……ありがとうございます」
「どういたしましてー」
引き上げられた私はとにかく忍装着に着いた土を払った。
「……いい加減にそこらじゅうに落とし穴掘るのやめてくださいよ」
「えー、なんで?」
なんでって………
相変わらず無表情で何を考えてるのか分からない顔をしている綾部先輩に呆れてしまう。
「……もういいですよ。…あれ?」
「…………?どうしたの?」
持っていたお土産の団子が無くなってる事に気が付いた。
「ユキ先輩達にお土産と思って買ってきた団子の包みがないんです」
「団子の包み?………おやまあ」
綾部先輩も辺りをキョロキョロと見渡して一緒に探してくれたのだが、結局団子の包みは見つからなかった。
「はぁ…………せっかく買ってきたのになぁ」
「………………」
ため息を付いて肩をガクりと落としこの場から去った。
「紫ちゃんじゃない!」
「あ、ユキ先輩にトモミ先輩におしげ先輩………」
団子を無くしたことで落ち込んでいたら、ユキ先輩達が心配そうに声をかけてきた。
「…どうしたの?元気がないけど」
「私達でよかったら聞くわよ?」
なんて優しい先輩達なんだろう……もう嬉しくて涙が出そうになるぐらい。
「……実は、今日任務の帰りにユキ先輩達にお土産と思って買ってきた団子の包みを無くしてしまって」
「「「えーー!」」」
「そうだったの………」
「ごめんなさい。お土産に団子を買って来るって約束したのに……」
シュンとしている私にユキ先輩達が励ますかのように、私の頭を撫でてくれた。
「いいのよ。そんなの気にしないで!」
「そうでしゅ!紫ちゃんのその気持ちだけで嬉しいでしゅからね!」
「そうよ!だから、そんなに落ち込まないで?私達は元気な紫ちゃんが大好きよ!」
「………ユキ先輩、トモミ先輩、おしげ先輩………うわぁぁん、ありがとうございます〜!!」
凄く優しい先輩を持ったと思って感動泣きをしてしまった。
「……………」
「……?!誰っ!?」
サッ
いきなり、ユキ先輩が慌てたような声で林の方を見て警戒するので、『どうしたんですか?』と聞いた。
「……誰かが、木の後ろに隠れていたのよ」
「えー?ユキちゃん、それ本当?」
「でも、確かに声を上げた瞬間、誰か去っていきましたわ……」
……??
私も改めて林の方を見れば、とっくにその人影もない林を首を傾げて見つめるのだった。