4年生
□3.最後のお願いの段
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「ファイヤーーー」
ドォォォォォンッッ
石火矢の放つ音と声がどことなく聞こえてくる。
恐らく、私と同じ4年ろ組の田村三木ヱ門と石火矢のユリコちゃんだろう。
三木ヱ門は石火矢に名前を付けて、たっぷりの愛情を注いでいる。
ユリコちゃん、春子ちゃん、カナコちゃんだったか……
「また、何処かでユリコちゃんの具合でも確かめてんのかな」
…なんて、気楽にそう思っていたら、私の方に向かって鉛状の石が飛んで来た!
「きゃあっ!!」
ドンッ「び、ビックリした………」
足元の近くで落ちて来て、驚いて避けようとして尻餅を付いてしまった。
「おーい!大丈夫か!………って、紫じゃないか…」
そこへ三木ヱ門が、悲鳴を聞いて慌てて駆け寄って来たらしい。
「……ミッキー、またユリコちゃんで練習?」
尻餅を付いたまま聞いてみれば、嬉しそうに『そうさ!今日もユリコは調子が良いんだ!』って、自慢げに答える。
その様子に少々呆れたが、これも三木ヱ門らしい。
「相変わらずね……それより、練習するなら気を付けてよ…」
「ごめんごめん、大丈夫か?」
「うん…………っ!」
立ち上がろうとすると右足首に痛みが走った。
「おい、どうしたんだよ?」
「右足……痛めちゃったかな…………」
「えっ!?」
「多分、尻餅付いた時に変にくじいたのかもね……」
右足首を撫でると、三木ヱ門が私の前に背中を向けてしゃがんだ。
「ほら、おぶって医務室に連れて行くから乗って」
「え………ミッキー」
「早くしろよ!怪我したら手当てしないといけないだろ!」
と言われたので、私は三木ヱ門の背中におぶってもらい医務室へと連れて行ってもらった。
「……軽い捻挫だね。暫くは安静にしていたら直ぐに治るよ」
「伊作先輩ありがとうございます」
保健委員会委員長の善法寺伊作先輩に手当てをしてもらいお礼を伝えたら、『どういたしまして』と言って、これから用事があるからと医務室を後にした。
「……大丈夫なのか?」
「うん。平気!軽い捻挫らしいからね」
右足を庇うように立ち上がれば、それを支えるように三木ヱ門が傍に寄ってくれた。
「そっか………」
「それより、ユリコちゃん練習してた場所に置きっぱなしでいいの?寂しがってんじゃない?」
「あ、あぁ………」
怪我させたことを気にしてるのか、いつもの三木ヱ門らしさがなく目を逸らしている。
「………まあ、フェアでもないよね」
「……え?」
「私に怪我させたから3つのお願いを聞いてくれるってのはどう?」
「!」
私の提案に三木ヱ門は大きく目を見開く。
その姿にクスッと笑ってから、『早速1個目は〜』と楽しそうに言う。
「………私の意見はなしか」
「あら、嫌?」
「…分かったよ!私は男だ!お前の願い事なんて叶えてやるよ!」
試すような言い方にムキになったのか、自信ありげに答えた。
「そう!じゃあ…………今日の夕食のデザートちょうだい」
「え!今日の夕食のデザートは私が好きな物だって分かってるだろ!」
「あら、さっそく破棄?」
「うっ…………わ、分かったよ!!」
三木ヱ門が承諾してから、そそくさとユリコちゃんの元へと駆け走って行った。
まさか、このお願い事が……役に立つなんて思いもしなかった。
最後のお願い事があの場の運命を変えるなんて…………