4年生

□4.襲っちゃおっとの段
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「紫」


「あ、ミッキーにタッキー…どうしたの?」

これから、善法寺伊作先輩に救護に使う包帯を渡しに行こうとしたとき、同級生の田村三木ヱ門と平滝夜叉丸が、私の元へ寄って来た。


「包帯なんか持って……あぁ、善法寺先輩に渡すやつか?」

「そう!予算会議では何とか予算ゲット出来たからね?」

「………っ!それは、お前があんな態度を取ったからじゃないか!」

会計委員会である三木ヱ門ことミッキーにウィンクすれば、ミッキーは頬を少しほんのり赤く染めながら言い返してきた。
本当にミッキーってからかうと面白いんだからな〜


「ふふふ。知恵も必要なのだよ?予算を貰うにはね」

「私のとこでは、全然予算は貰えなくて七松先輩が暴れて大変だった」


滝夜叉丸が入ってるのは体育委員会……体育委員会の体育委員長はあの七松小平太先輩……トスされればアタックしてしまう怪物のような人だ。




「………お疲れ様」

苦笑いを浮かべていれば、『おやまあ』と穴堀り小僧の綾部喜八郎がやって来た。忍装着が少し汚れてるからして、さっきまでまた敷地内で穴を掘っていたんだろう。


「集まって何話してんのー?」


「あー、喜八郎!まあ、色々な」



「この前の予算会議ではかなり予算が取れた話」

「あー、それねー。それでその大量の包帯?」


「そう。包帯不足になってるから………まあ、殆ど使うのは不運委員長とも呼ばれる善法寺伊作先輩だけど…」

毎度のように不運が降りがかるあの先輩には、つくづく可哀想に見えてしまう。

「あの人は本当に不運だもんな………」

「伊作先輩に関わった食満留三郎先輩もそれなりに巻き込まれて、包帯を巻く時あるよ……」


「……紫まで不運になるんじゃないか?」

滝夜叉丸に言われて、ブンブンと顔を横に振った。



「冗談じゃないよ!不運にだけはなりたくない………」

「不運委員長で悪かったな」


「きゃーっ!!?い、伊作先輩!!?」

ヌッと現れたのは、まさかの善法寺伊作先輩!!
ってか、ミッキーもタッキーも見える位置に立ってるんだから、教えてくれてもいいのに!



私は、ミッキーとタッキーに目でそう訴えれば、それに気付いた2人は苦笑いで手を横にブンブン振る。


「呼んだのに遅いから迎えに来てみれば、僕の悪口を言ってたとはな」

あの優しい気さくな伊作先輩が、口調からしてお怒りな様子……ひぃ



「あ、いや………悪口だなんて!」

「言い訳はいい!早く来て」


「は、はい!……じゃあ、ミッキー、タッキー、喜八郎、またあとでね!」


「あぁ………お達者で」

「御愁傷様……」

「…………」


おい、ミッキー!お達者でってどういう意味よ!!

と心の中で怒りの突っ込みを入れながら、伊作先輩に掴まれた腕がグイグイと先に引っ張られるのだった………





「………い、伊作先輩」


「…………………」


ひぃぃ!!本気で怒ってるよ〜!!


声をかけても無言を貫く伊作先輩に私は涙目になった。


「ご、ごめんなさい!悪口のつもりは本当になくて………伊作先輩、いつも不運になってるから、ちょっと……可哀想だなって………その……」


言い訳が滅茶苦茶でどう話せば良いのか分からず、シュンとしていれば、伊作先輩がやっと声を上げた。


「……いいよ。もう。そんなことだろうって思ってたからね」

「………え」

そっと伊作先輩を見上げれば、そこにはいつもの優しい伊作先輩の姿があった。

「あの場でキミをからかっただけだよ。だって、フェアじゃないだろ?僕の噂をしたんだからね」

「………伊作先輩、ありが………きゃっ!!」

「!危ない!!」



ドサッ


立ち上がろうとすれば、足がズルッと滑り後ろに転びそうになったのを伊作先輩が助けようと手を伸ばすのだが……




「……ったぁ」


「あ、大丈夫……か?」

「「………!」」


お互いをよく見れば顔が近いのに気付いた。おまけにお互いの態勢からして、第三者から見れば伊作先輩が私を押し倒してるように見える。
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