小説

□きみ小さな手のひら。
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『げほっ、げほぅ…ゔぅ、、』




「彩!?大丈夫か…」



『もも…ちゃ、ん、苦しい…』




「先生呼んだから、もう少し頑張るんや!!」






俺の妹の彩は小さい頃から身体が弱く、入退院を繰り返してる。





そんな…彩のいない寂しさからなのか、学校では俺は悪い友達とつるむようになってた…




両親も彩が心配で俺のことなんて気にしてないからその辺りは自由にしてた。









彩は生まれつき、重たい喘息持ちで…



発作が起きるといつも顔を真っ青にして苦しみ始める。



それを、見るのが辛いけど…



妹として、双子とてしてほっとけなくて入院した時はよくお見舞いに来る。












今日は来ると彩が発作を起こしてて、すぐに医者を呼べたから良かった。












『もも…か…』




「あ、目覚めたか?良かった。」




『ずっとおってくれたんやね。』




「まぁな、…」




そう言って彩の頭を撫でる。





『ん、ももか…タバコ吸ってるやろ。』





「え、は?吸ってへんよ。」




『また悪い人たちと絡んでるんや。』




「絡んでへんって…」




学校も一緒やから、彩にバレてて…
こうやってよく怒られる。


でも、親にはチクってないみたいや。


『タバコはやめや?私にも悪いし…百花にも悪いんやから。』




そっか、そういえば親父も彩が喘息って分かってからタバコやめてたな。




そういうことなら、やめなあかん…





「そうやな、ごめん…やめるわ。」




『ふふっ、ありがとうももちゃん。』



「その呼び方はやめろって言ってるやろ。」




『え?なんでよぉ。』



「なんでよって…」




俺たちは双子で百花と彩で、男と女の双子ってこともあり…



親が女同士の双子が良かったのか男なのに、ずっと女の子みたいな名前が嫌だった。



でも、小さい頃からずっと一緒で大好きやった彩が喘息になり離れることも増えてから…



彩がももちゃんって言ってたのに、それを言われないと余計に寂しくて…


会った時に彩を感じられて安心するから…まぁいっかと、結局は許してたから。




今だにその呼び方だ…



そういえば、小さい時の彩が言ってた。




『さぁちゃんね、ももちゃんの名前が良かったな〜。』




「なんで?ぼくやだ。」



『かわいいもん。』




「……」



『さぁちゃんが、すきでもやだぁ?』




小さい時から俺は何かと彩に弱くて、その時もなんでも許してしまってた。




「ううん、いいよぉ…」



『やっちゃ!ももちゃんすきぃよ。』



ぎゅっ、、




「さやか…」




だから、いつも一緒に居たから初めての入院した時は余計に寂しかったな…





『私だけの百花の呼び方やんか。』




「まぁ、ええねんけど…発作も起きたんやしゆっくり寝るんやで。」




俺は帰ろうとした。




『もう帰るん…?』



「また明日も来るから、そんな顔すんなや。」



『うん、絶対来てな…』



「分かったって、じゃあな?おやすみ。」



『おやすみ。』





彩の頭を軽く撫でて、俺は家に帰った…




いつも帰る時、寂しそうな顔をするのが頭に残ってしまい早く家に帰ってこれたらええのになって。
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