きみに、一輪の愛を…

□Episode4
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『ゆ、ゆーり…吐きそう、、』




「はい…洗面器!」




それから治療が始まって、休みの日は面会開始から終わりまでずっとついてる。



学校の日も彩が体調悪そうやったら昼まで行って早退して病院に行く…



少しでも彩と居たくて、離れてると不安でたまらないから。







『げほっ、げほっ…』




抗がん剤は強い薬やから、彩は毎日吐き気と倦怠感、熱にうなされてて…どんどん弱ってくのが目に見えて分かってた。







「俺に遠慮せんでええから、スッキリするまで洗面器持っておくよ。」





『うん、、』




しばらく吐き続けてて、落ち着くと気絶するように彩は疲れて寝てしまう。





『ん…ゆーり…?』





「どうした?」




でも、今日はいつもと違って少しすると目は瞑ってるけど僕の名前を呼んだ。







『家…帰りたい…学校も行きたい…』





「この治療落ち着いたら、結果次第で退院できるから…帰ったらさやの言うことなんでも聞くよ。」





『ほんま…?宿題ちゃんと、してくれる?…』





「するよ、母さんの手伝いやってするし朝もちゃんと早く起きる。なんでもいうこと聞く…さやのしたいことも全部つきあうから。」





『うん…なら、頑張るよ。』




そう言って少し笑うと彩はまた寝た。





治療は順調に進んでいき、病気にも効いてるみたいで手術もできるようになったから成功して少し治療してその後次第やけど退院できることになった。



だいたいこの辺やろうって、感じやけど決まった…




母さんは僕が彩ことを知って病院行ってるのも気付いてた。



隠そうとしてたのが間違いやったと…









それから治療が一旦終わって、、、





『あとは手術か…』





「うん、その後少しだけ治療して退院やってさ。」





『治療したくないな…』





彩が治療に対しての弱音はこれが初めてやった、家に帰りたいとか学校に行きたいとは一回言ってたけど、どんなに吐いても熱が出てもこれは言わなかったのに…






「あと少しだよ、あと少しやから。」




『うん…ありがとう。』



ぎゅっ。





なんでか僕が泣きそうなってしまい、誤魔化すように彩を抱きしめた。




『ふふっ、どしたん?ゆーり…』




「ううん、なんでもないよ…退院したらデートしよ?」




『デート?そんな言い方…』




「良いじゃん。」




『うん…分かったよ。』





すると、僕の顔をみて彩は笑った。




やから僕も笑わないとって頑張って笑顔を作った…こんなに笑うのが苦しいなんて初めてや。



正直に言って、母さんと父さんが話してたことを僕は昨日聞いたばかりやったから。















彩の病気はかなり稀でしかも進行してて、抗がん剤で腫瘍小さくして手術しても再発の確率の高く…でも再発したら完治はもうほぼ無理らしい。



だからって、永遠に再発しないように治療したらどんどん弱ってくらしくて…それならって。






やから今は泣きたくて泣きたくて仕方なかった、彩のいない将来なんてどうやって生きていけば良いんやろうか。




僕がなれば良かったのにって、どれほど思ったか…こんなにも愛してる人をなんで奪ってくのか。




意味が分からなくて、それを聞いてから生きてる心地がしない…



彩を失う、彩いない世界なんて耐えられない。
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