はちみつレモン。
□Episode4
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それから、高校の卒業式が終わり…
彩さんはその後もバイトらしく、次会うのは大学生活が始まってからかななんて思ってた。
僕も塾に行き始めて本格的に受験へと準備を始めたから余計に時間が合わずに居たんや…
そんなある日のこと。
今にも降り出しそうな曇り空の日やった…
彩さんがデートしようって誘ってくれた。
『お待たせ!ゆーり。』
「ううん、いこっか!」
『うん!久しぶりやな?』
「そうだね、メールは毎日してるからそんな感じないけどあまり会えてなかったもんね。どう?大学は。」
『ん…まぁまぁかな。』
「え?そうなの?バイト大変やからかな。」
『うん…そうやな。』
いきなり彩さんの返事がそっけなくなってなんか聞いたらいけなかったかなって心配した。
『今日は映画見に行くんよな?』
「そうだよ〜、彩さんが前に見たいって言ってたやつがちょうど公開してるから。」
『ふふっ、覚えてくれてたんやね。』
「もちろん!」
『やっぱり、ゆーりといると落ち着くな。』
「あははっ、それは僕もだよ。」
二人でぎゅっと手を繋いでずっと特に彩さんが離さなかった。
それがなぜが僕にはいつもとまた違う感じがして…もしかして、デートの終わりに何か言うつもりなのかって思ったんや…
でも、そんなことは考えないように考えないようにしてた。
彼女が僕から居なくなったら、なんて考えられないから。
「彩さん彩さん!」
『あ、ゆーり…どこ行っとったん?もう始まるのに急ににおらんくなって!』
映画のチケットを買って、ポップコーンを一つとジュースを2人分買ったあと少し彩さんから離れてあるものを買いに行った。
「ごめんごめん…」
彼女は少し怒ってて、でも頬を膨らませて怒ってるのは可愛いを超えて愛おしいとしか思えなかった…
『どこ行ったん。』
「彩さん後ろ向いて?」
『なんでよ、映画始まっちゃうやろ。』
「良いから、ほら!」
『もう…』
機嫌を損ねてしまって、やばいと思ったけど…とにかく後ろを向かせた。
「はい…プレゼント。」
『えっ。』
「プレゼントしたことなかったなって、バイトして貯めたんだ!」
僕はだいぶ前にデートした時に彩さんが欲しいそうにしてた、Yのイニシャルがついてるネックレスをプレゼントした。
なんでこれが欲しいのって、聞いたら…
"ゆーりがいつもそばにいてくれる気がするやん、これつけてたら〜…ふふっ、何言ってるんやろ。でも!デザインも可愛いし。"
って、照れながら彼女がそう言ってくれて…めちゃくちゃ可愛かったのを今でも鮮明に思い出すな。
その時はちょっと高くてお互いに手をだせなくて、諦めるしかなかってけど…
自分のイニシャルを欲しいなんて言ってくれて、恥ずかしいけど嬉しくてプレゼントしようとその時に決めたんや。
『ありがとう、、、ゆーりっ…』
ぎゅっ。
「良かった、喜んでくれて。」
『大切にするよ…ずっと絶対に…』
彩さんは涙目になって喜んで抱きついてくれて、嬉しかったけど…
なんだかやっぱり切なそうにする彼女に違和感があった。
でも、その違和感はまさに的中やった。
「今度はいつ空いてる?バイトがない日に僕が合わせるよ!」
やから余計に最後に次の約束をしたかった…
『ごめん…もう会えへん。』
「なんで…?」
『ゆーり…』
「ん?」
『別れて…欲しい。』
途中言葉に詰まってたけど、彩さんは僕の目を見て言った。
「やからなんで?」
『なんでも…特に理由はないねん。』
「そんなん納得いくわけないやん!大学やって一緒のところに行くって言ったやん…待ってくれるんやなかったの?もし、あまり会えてないのが嫌なら僕は絶対に彩さんが会える日に会えるようにする。毎日会いたいって言うなら、毎日バイト先にだって行くよ!」
すると、彩さんぽたぽたと涙を俯いて流してた…
『違う…そんなんやない、、』
「じゃあなんでっ…!」
『今は…なんも聞かんで欲しいねん、、』
「彩さん…」
『ゆーりのこと嫌いになったわけやないし、今やって大好きやけど、、でもあかんねん!!』
「…大学は一緒のところに絶対に僕は行くよ。」
彼女の様子を見てたら、並大抵の理由で言ってるんないって分かった気がした。
『大学も…辞める。』
「えっ…」
『やから、分かったってゆーりに言って欲しい…お願い、これ以上私を困らせんで、、、』
そう言われたから、彼女を愛してるからこそ…
「…分かった、でも…」
『ありがとう、元気でね。』
「彩さん!!」
僕が言うのを遮って彼女は背中を向けて歩き始めた。
彩さんの名前を呼んだらそれとほぼ同時に雨が降り出して…
追いかけるなって、言われてるようで足が動かなかった。
最後まで振り向くことなく、彩さんは途中で曲がってもう居ないのに…僕はその場所から離れられなくて。
彼女に別れを告げられた悲しみと痛みに、どうやって耐えていこうか…どうやって生きていこうかって人生初めての絶望やった。
チューリップの花が近くに咲いてた…
まるで僕たちの未来を見せてたのか…って罪のない花にさえ八つ当たりをしたくなった僕やった。