はちみつレモン。
□Episode3
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『でも、ありがとう。気持ちだけは受け取るよ?じゃ、そろそろ帰るわ…』
「あ!送っていくよ!」
僕はすぐに彼女をおぶった。
たぶん、こんなに熱があったら玄関に行くのも無理やろう…
『ありがとう、ゆーり…』
「あははっ、良いんだよ?僕に出来るのはこれくらいやから。」
『ゆーりがどれだけ私の支えか、、、』
彩さんはまた泣いてるんやろう、声が震えてるって思ったら言いかけてやめた。
家を出て、しばらく歩いてから僕も言った。
「あのね、彩さん…?」
『ん…?』
「僕やって、彩さんがどれだけ支えか分からないくらい支えてもらってるんだよ?」
『なんでよ、私はゆーりに何にもしてあげられてないやん…』
「ううん、彩さんが居てくれるだけで…その存在が支えなんだよ?何でもやる気にさせてくれるし。」
『ふふっ、ありがとうね。』
いつもの覇気は全くないけど、彼女の弱い部分も全て僕は受け入れる。
だから何にも遠慮しないでしてあげられることは少ないからこそ、全ての姿を見せくれたら良いんだよ?
その分、僕たちの絆も愛も深まる気がしてそういう存在が支えになり…自分を強くしてくれるから。
ーーー
彩とは保育園からの付き合いで、お互いに他に遊んだり仲良かったりした子はいたけど…
なんだかんだ、いつも2人の空間に落ち着いて気付いたら私は彩しか友達がいなかった。
小学校の中学年の時に私の父親が会社で横領してるのがばれてクビにされ、またその会社の同僚の子供が私と同級生やった…
(由依ちゃんのお父さんって泥棒なんだって〜、やから遊んだらあかんって言われた。)
親は離婚せず、父親も新しい仕事を始めて一からやり直すことで家庭崩壊はまのがれた…
でも、私はそのおかげでクラスメイトから無視されいじめを受けるようになったんや。
「お母さんはなんでお父さんを許すん?!なんでよ!!早く追い出してよ!!」
(由依…あなたにも言ったでしょ、お父さんは反省してるの、一からやり直すってやから許してあげて?人間はね、失敗する時もあるの。)
うちのお母さんは正直に言って馬鹿やと思った、そんなの反省して直るわけでもないし…
なんで私のことは考えてくれへんの?って。
でも、その噂を聞いて何も変わらなかったのは彩だけやった。
『由依も行こうや?外で鬼ごっこするんやって。』
「でもみんなが…」
(あ、彩ちゃん!由依ちゃんは誘ったらあかんって〜)
知ってると思うのに、何も知らないふりをするのは彩の得意技やと思う。
『由依、誘ったらあかんの?』
(え、彩ちゃん知らんの?みおちゃんがさ、言ってたやん…由依ちゃんのお父さんは…)
「もうやめて!!はよ行くんなら行きや!!私のことなんかほっておいて!!」
(ふふっ、ほんまらしいよ?行こう彩ちゃん。)
私はものすごく悔しかった、あんな父親のせいでクラスメイトから無視されてはみられて…しかも幼馴染みまでって。
あんなやつ、保険金かけてさっさと死んで欲しい。
死ぬ時くらいちょっとは役立って…
そんなことを小学生の時から考えてたのを思い出すと、自分がちょっと怖くなる。
『由依?なに怒ってるんよ、私は由依と遊ぶで?』
「ええよ、そんな同情いらんねん!!」
(由依ちゃん、偉そうに言わんで?お父さん会社からお金取ってたくせに!!)
『やからどうしたんよ、お父さんがしただけやろ?由依には関係ないやん。』
(か、関係あるよ!!)
『なんでよ、あんた頭もおかしいんやないん。』
「彩…」
『私、もともとあんた達のそういう噂好きなところ嫌いやってん。由依とか本人達のこともなんも知らんのにアホやないん。』
それで、その子は泣き出して先生がきて彩は連れて行かれた。
(山本さんちょっと来なさい。)
「ちがう!彩は悪くない!」
『いいよ、本当のことを言うから。由依あとで鬼ごっこしようね。待っててな〜』
それから私に対するいじめはなくなった。
彩は自分が本当に悪くないと思ったら、何にも動じず冷静で…でも明るくて周りまでそれが映るような子やった。
でも、自分が間違ってるって分かるとそれもちゃんと認める。
性格も良いし優しいし可愛いし真面目やし…
全てが揃ってて、私には眩しかったけど彩が居て本当に助けられてきた。
やから今やって彩が居てくれれば他に友達なんていらないって思ってる。