きみに、一輪の愛を…
□Episode11
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そんなこんな、今度は平和に過ごせそうやってなんとなく思ってたけど…
何かここの所、彩が男子と話してるのを見ると胸がチクチクして痛くなる。
前はなかったのに何かの病気?
(なぁ、太田さんここ教えてくれへん?)
(あ、ずるいぞ!!俺も教えてや!)
『あ、うん!いいよ、ここはこっちから解いた方が答えが出るのが早いねん。』
彩がまた学校に来れるようになってから、もともと男子から人気があったからか勉強を教えて欲しいとか言って近づこうとしてる。
「見舞いにも来なかったくせに…」
「ん?夢莉くんどしたん?」
「あ、いや…なんでも。」
「ふーん。」
ちょうど山田さんが隣を通ってて、少し聞かれちゃったけど誤魔化せたかな…
ーーー
今回は治療を頑張った成果が出てるのか、退院してからも調子が少し良くて1週間経ったけどまだ体調崩してない。
でも、体育だけは参加できひんけどな…
『良いな…』
私も久しぶりに外で思いっきり走って運動したい。
みんなが外でサッカーしてる中、私は体育館の屋根の影に座って見学してる。
(いってぇ…)
『あれ、どしたん?大丈夫?』
遠くばっかり見てて、近くまで来てる男子に気付いてなかったみたい。
(ぶつかって転けてさ、めっちゃ痛いねん…なぁ救急箱とかない?保健室まで行くのも辛い。)
『あ、あるよ!ちょっと待ってね!』
一応置いてある救急箱を持ってきて、膝を消毒してあげた。
(ありがとう、太田さん。ごめんな?)
『ううん!全然!ここに居ても暇なだけやし。』
(具合はまだ悪いの?病気のほうは…)
『うん、まぁまぁ…かな。体育はまだ出来ひんねん…。』
最初は病気が深刻なのはみんな知ってるみたいやし、少し気まずそうに聞かれたけど。
(そうなんや、早く良くなると良いな?)
『うん!ありがとう!』
それから私たちはいろんな話しながら一緒に座って見学をした。
誰か、こうやって一緒に見学してくれる人がいれば寂しくないし…悲しくもならないんだけどなぁ。
そんなの私の勝手やって分かってるけどね…
ーーー
「…………」
「ん?どうした、夢莉?」
「別に…」
体育の時間、彩のところに行こうかなって…今日は男女とも戸外やったから。
なのに、クラスの男子と楽しそうに話してるし…
「なんやねん…あほぉ…」
「ん?誰に言ってんねん?って、あ!彩ちゃん
んか!」
「うるせぇよ。」
俺が唯一クラスで話す奴、谷川は肩に手を回してくっついて来て言う。
こいつは誰とでも距離がおかしいねん。
やから、友達を作らない自分でさえ勝手にその輪に入れてくる。
まぁ、でも…嫌いやないけどさ。
「あー、あいつさっきぶつかって足擦りむいてん。お前も転んで擦りむいたらええやん。あははっ!」
彩と話してるやつを指先で笑いながら言う。
「おい。」
「ごめんって、怒んなよ〜。」
「別に怒ってないし。」
「お前もさ、誰か女の子と仲良くしたらええやん。彩ちゃんやって女の子なんやから男の子と良い感じになるのは当たり前やで?兄妹やねんからお前らは。それに夢莉はモテるんやからいくらでもおるやろ。」
「そういうのやないねん。」
「あっそーですか〜、ほんまにくっだらねぇ。」
「はぁ?」
「あははっ、冗談やって。半分本音やけどっ。」
「あっ、待てや!この野郎!」
谷川はそう言って笑いながら逃げるから僕もそれを追いかけた。
でも、なんか考えすぎなんやろうかって思うけど…やっぱりモヤモヤというか胸がズキズキする感じ。
彩となんかその後話したくなかった。
ーーーー
『ゆーちゃん、お弁当一緒に食べよう。』
今日は山田が委員会で昼休み居ないからいつも屋上で食べてる夢莉を誘った。
前はいつも一緒に食べてたけど、屋上まで行くのが私には結構しんどくて…最近はあんまり一緒に食べてなかった。
「嫌だ。」
『え?』
「嫌だって言ってるねん。」
『なんで?』
夢莉は良いよって言ってくれるものやと思ってたから、返事が頭に全く入らなくてすぐに理解できなかった。
「嫌だから、さやと食べるのが…」
『そ、そっか…』
すると、すぐに教室を出て行った夢莉…
なんか怒ってる?
それか眠たいからお腹空いてるからで機嫌が悪いだけかな。
こんなこと今までなくて本当に頭がついていかなかった。