きみに、一輪の愛を…

□Episode10
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それから特に何もなく過ごしてて、彩はいつも通り前の治療が始めることになった…




なにもしないでおくのは時間がもったいないと言い出した。


また強い薬を使うけど、副作用見て落ち着いたらまた通院での治療になる。


覚悟を決めたって言ってて…正直怖かった。


でも、僕がこんな弱気やあかんって。














『はぁっ…はぁっ…』



「さや、水のむ?」








相変わらず毎日来てるけど、やっぱり最初は高熱が出るから苦しそうな彩に何をしてあげたら良いかわからない。




『ううん…』



「そっか、タオルもう冷たくないな。」




おでこに置いてるタオルがすぐに冷たくなくなるから…それをまた氷水に入れて絞ってを繰り返すしかない。




『ゆーちゃん…』




「ん?どうした。」




『はぁっ、はぁっ…もう、帰る…じ、かんや。』




「あ、ほんまや…でもまだ大丈夫やから。さやが眠れるまでいるよ。」



このままや、帰っても心配で何も手につかない。



居てもしてあげれることほぼないけど…


ガラガラ。


(大丈夫ですよ?ここは完全看護師なので私たちが居ますから…もう面会時間終了なので。)




会話を聞いてた担当の看護士さんが入ってきてそう言われた。



もうほんまに…ちょっとくらい許してくれても良いのに。



「いや、でも…」




彩の手を離せなかった。




僕が離れられないだけ…





『大丈夫や、から…』




「……分かった、また明日も来るから。学校終わったらになるけど。」




『うん、ありがとう…げほっ!げほっ!、、はぁっ!はぁっ!』



「さや!!大丈夫!?」



(大丈夫ですよ、熱も出てるし副作用の加減でなるので少ししたら落ち着きます。)




「…………」




『大丈夫やっ、げほっ、、げほっ、、』



荒い息をした後、また少し咳してたけどさっきよりは大丈夫そうやから帰ることにした。




「また明日…」





彩の手をぎゅっと握って、僕は病室を出た。




あまり僕がいるのも彩の負担になってるのかもしれないって思ったから…













「ただいま。」




(ゆーり!こんな時間まで…また彩のところにいたん?看護士さんたちにも迷惑なんやから少し会ったら帰りなさいって言ってるやろ。)




母さんは帰るとすぐに僕を怒ってきた。




「帰れるわけないやろ!!あんなしんどそうなさやを見て…母さんには分からへんねん!!」




(分からないわけないやろ?!ほんまに…)




そう言われて、確かにってなって…イライラしてたから少し黙った。



「あ、そうや…」



(ん?)




「さやと二人暮らしいつかしたいねん、いつなら許してもらえる?」




(は?あんた何言ってるん?)




「母さんと父さんはさやはそんな長くないとか思ってるんやろ?俺は思ってない。やから、2人で暮らす約束したんや…」




(彩の病気のこと大体は知ってるやろ?)



「知ってるけど、母さんの言ってたさやが目指してた大学行ったら許してくれるか?」




今日の彩を見てたら、余計に早く許可取って楽しみを作ってあげたいと思った。



そのためなら何でもする。




(無理やろうけど、まぁそれならええんやないん?父さんやって住む家くらいのお金は出してくれるやろ。)




「それ、聞いたからな。祝いも何もいらんから合格したらさやと俺が2人で暮らす最初の援助だけお願いします。」




(祝いより高くつくねんからな…まぁ、受からへんやろうけど。)




「…………」






自分で言ったけど、高校生のうちは無理やろうし…


大学生になったらってなると、俺がそれだけの大学に行けるようにしないと親は絶対に反対するから。




何も言わせないためには、これしかないって思った…




もう2年もない、今からでももう勉強しても無理かもしれない大学。






彩との時間は削れないけど、夜遅くまで勉強して朝早く起きて勉強して…学校でも時間を無駄せずに勉強しようと思う。




僕も何か頑張らないと…彩ばっかりなさせられない。






ーーーー





強い薬を使ってると、身体がその分弱ってくのが分かるくらいやった…



でも、私は死ねない。




夢莉を残していくなんて出来ないや。




ガラガラ…



そう思ってたら、ドアが開いた。




「さや!母さんに二人暮らしの許可取ったよ!」




その言葉に私は一気に目が覚めた。




『えっ!ほんまに?!』



「うん!!」




『なんで?そんなに簡単に?』




「まぁ、条件付きやけど…」



『条件?』




「さやが言ってた大学合格したらっていう条件や。」




『え、ゆーちゃんが?』



「うん。」




『大丈夫なん?』



「大丈夫やって、さやのためならなんでも出来るし。」




夢莉はもともと勉強嫌いで、私が教えてあげるって言うと宿題とテスト勉強はするけどお母さんたちに怒られてもなかなかしない。



別にしたら出来るんやけど、めんどくさいらしくて…



やからってめちゃくちゃ頭悪いわけでもないから、真面目にしたら私より良い成績取るのにもったいないと思ってたほど。




『勉強嫌いなのに…』



「さや、分からないところ教えてね。」



『それは全然ええけどさ。』



「ん?」




『せっかくの高校生活やのに、私のためにそんなことせんでも…自分の好きなことしたいやろ?あの日のことは忘れてくれてええんよ?』



「約束したやん、別にしたいことないし学校は嫌いやけど…さやと居られるならなんだってするよ。」




『ゆーちゃん…』



その言葉が嬉しくて泣きそうになったけど、なら…私も頑張って生きないと夢莉の努力と時間を無駄にしてしまう。




「頑張るよ〜!!やっぱりさ、親がいたら色々と窮屈なこと多いし。」


『なら、私も頑張るね。ゆーちゃんに負けてられないや。』




「おっ!じゃあ俺は勉強を頑張って大学に合格する、さやは治療を頑張る。約束ね。」



『うん!』




2人でゆびきりして、約束した。



私は頑張れる。



 
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