きみに、一輪の愛を…

□Episode9
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夢莉が帰ったあと、ほんまに疲れてたんか夜ご飯にも起きず朝までぐっすり眠ってたみたいやった。





朝になってから、看護師さんがそう教えてくれて自分でも驚いた…





そんだけ体力が落ちてきてるんかなって、このなにも進まない生活に少し不安感じた。






『ゆーちゃん、早く来んかなぁ…』





夢莉には急いで来なくて良いとか言ってるけど、本当はこの1人の時間が寂しくてたまらない。




いつも一緒やったから、この離れた時間は心細くもあって…早く家に帰りたいのが本音。




治療出来ないなら尚更に早く家に帰らせて欲しい…夢莉との時間を大切に大切に過ごしたいから。








そんなこんなで、寝過ぎてもう寝られないから朝から少し休憩を挟みながらその日は山田が貸してくれた本を読んでた…











ガラガラ…




「さや〜」




すると、あっという間に夢莉が来る時間になってたみたい。






『あれ、もうそんな時間になったんや。』




「うん、今日は6時間目がない日やった。」




『そんなんや?退屈やから、本読んでてん。』




「今日は体調良さそうやな?」




そう言って、いつも聞かないことを聞いてくる。





『うん?まぁ普通やで?』




「そっかそっか!」




『どしたん?』





なんか嬉しそうに話すからちょっと違和感を感じる。


双子やからかな?そういうのはす敏感ですぐ気づくから…






「さや、ちょっとだけ外に散歩行かへん?」




『散歩?でも先生に許可取らんとあかんやろ。入院してから出たことないし。』




「大丈夫やで、ここ数日は数値も悪くないし体調も良さそうやからって許可もらった。でも一応本人にも最初に聞いてみてって。」




『ふふっ、そうなんや?なら大丈夫やで。』




散歩かぁ、ほんまに外の空気吸うのちょっと久しぶりやな。






「じゃあ行こう?寒かったらあかんからカーディガン…ってこの気候なら大丈夫か、よし行こう?」





『うん!!』




差し伸べてくれた夢莉の手を掴んで私はゆっくりベットから降りて立ち上がった。



『ちょっと足元あぶないかもしれへんから、ゆーちゃんエスコートしてよ?』





「もちろん、ほらゆっくりで良いから!」





『ふふっ、うん!』




少し歩きにくさは感じたけど、なんだか嬉しくて嬉しくて…ちょっと泣きそうになりながら夢莉と手をしっかり繋いで外に出た。







『わあ〜良い天気や!』





「やろ?散歩日和やで、ほらこっち行こう。」





『うん!』




もう散歩コースは決めてるんか、夢莉は私の手をひいてどこかへ行く。





『ん?ゆーちゃん?』





「さや、ここに乗ってしっかり俺の腰に手を回してつかまってな?」





すると、駐輪場にある自転車を出して私に後ろに乗れと言わんばかりに誘導する。






『どっか行くん?』





「やから散歩やって、遠くないから大丈夫!近いから!」





でも、自転車で行くってあり?




そんなこと思いながらも、私が途中で落ちないように自転車を運転しながらも片手は腰に手を回してる私の手を持ってる。






そんな夢莉の背中に私はそっと頭をつける…





『あったかい…』




「ん?大丈夫?」




『大丈夫やで、風がすごい気持ち良い。』





「ほら、さや!ついたよ!みて!」





『ん?……わあ〜!』





言われて座ってる方向を見ると、斜め下前に見える輝いてる海があった…





『綺麗…!!』






「さやときたいなって前通った時思ったんだ。」




『ふふっ、そうなんや?ありがとう。』




「ほら、降りようか。」




どうやら海の近くまで行くみたいで、自転車から降りて砂浜に降りた。





「足元気をつけてな。」




『うん、あっ…』




「よいしょっ。」



ばさっ。



気をつけてって、言われてすぐに足を砂に持ってかれそうになった。





『ふふっ、ごめんね。』




「ううん、歩きにくいからねここ。大丈夫?」




『うん!』




でも、すぐに夢莉は私を抱きしめるように支えてくれて…なんて言うんやろすごく心強かった。




「ほら、めっちゃ海綺麗やー!!」




『ほんまやなぁ、ちょっとあっち行こうや!』





「えっ、さや?」





私は足だけでも、海に入りたくなって夢莉を置いて水の方に行く。







ぱちゃん。





『はぁ〜、冷たい!』





「さや、風邪ひくよ!それはやめておこうや。」





『んふふ〜、……』





「ん??」






ばちゃんっ!!





「うわっ!!冷たい!!」





『あははっ!!楽しい〜!』




「もう、楽しいけどさ…一回だけならええか。」





ばちゃん!!





『きゃあっ!!冷たい!!あははっ!!』





「これでおあいこやで?ほら、上がって〜」





私はダメって言ってる夢莉にちょっとだけ反抗して、ちょっと海に入って水をかけると…
やり返されて笑いが止まらないくらい楽しくなった。




すぐに夢莉は私と手を繋いで砂浜に上がらせたけど、タオルは一応持ってきてたらしい…



「結構、濡れちゃったなぁ…大丈夫?寒くない?」




『全然こんなの大丈夫やで?やり返してくれて楽しかったし。』





「そっか、ならいっか!」




『うん!』





そう言いつつも、自分の方が濡れてるのにしばらく私をタオルで拭いて肩に新しいタオルをかけてくれた。





それから2人で寄り添って座って海を眺めてた。





「なぁ、さや?」




『ん?』




「恋人ごっこしない?これから。」





『ふふっ、なにそれ。小学生でもせんやろ。』




って、夢莉が、急に言い出したことに驚いつつもなんか小さい子みたいで可愛いくて笑った。





「えっと、なんていうか…こ、恋人みたいにするんだよ。」





『そのままやん…』



「俺たち双子やからそういうの許されへんけど、誰にも言わずごっこやったら何も言われへんやろ?」




『あー、そういうことか。』





「ええやろ?」




『ふふっ、強制やん。』





「あかん?」





『ううん、でも…親とかにどうせ言えへんのやからさ。ごっこやなくて、ほんまに…その…』





肝心なことがお互いに照れが今さら入っちゃってなんか濁してしまう…




「そっか、そうやな…さや、付き合おっか。」





『ふふっ、うん。』




夢莉が言い出したことで、私たちは姉弟を超えて恋人同士にもなった…




「じゃあ、まずは…」




『ん?』





「近いのキスしよっか。」




『ぶふっ、、!!それは結婚や!』




「あー、そうかもしれへんけど…さぁ、ええやん。」





『ゆーちゃんは、私とキスしたいだけやないん?』




「まぁ、そういうことよ!」




ちゅっ。





恋人同士やなくても、私たちは何回もキスしたことあるけど…なんだか今日のキスは少し特別で不思議な感覚やった。







『ゆーり、キス長いねん…息辛いから。』






「ごめん、やって離れたくないねん。」




長いのに、かなり濃厚なキスやったからかな…私は途中で息が苦しくなって夢莉の肩を叩いて離れさせた。




『でも、やっぱり…ゆーちゃんが1番好きや。』




「あははっ、俺もや…で。
なぁさや?何かしたいことある?」




照れてるのを夢莉は隠しながら、そう聞いてきた。






『んー、本当のこと言っていい?私がずっと思ってるの。』





「ん?良いよ。」





『ゆーちゃんと2人暮らしがしたい!恋人で言ったら同棲みたいな。』





「2人暮らしかぁ、母さんと父さん説得するのか時間が掛かりそうやなぁ…」





『時間あんまりないのにな。』




「そんなことないやろ?まだまだ時間はいっーぱい!!ある!!」





夢莉は、私が言ったことが嫌でこう言ってるけど…この病気でいま治療出来ないで進行はしてるのに何もしてないから。



ある時間もどんどん減ってて、何年もいや明日やって分からないのくらい知ってるんやから…



『ないよ…ゆーちゃん、知ってるのにそういうのええねん、、、』





「怒るなよ、知らへんし。」





『……、、、』




私は思わず、拗ねた勢いで泣き出してしまった。






「さや、帰ってから俺さ母さんに言ってみるよ。高校生の間はでも無理やと思うから…なんだかんだ、俺とさや次第なんやからそういうネガティブな気持ちは持ったらあかん。」





ぎゅっ、、、





『ゆーちゃん…、、、』






「大丈夫やから、俺がちゃんと説得して2人で暮らせるようにするよ。」





『ゆーりは私と2人で暮らしたいって思うん?、、、』





「思うに決まってるやろ?、ほら泣いたら全部台無しやから…泣くの禁止!」




『ふふっ、はい…』




「あっ、ほら貝殻あった!!こっちもや!!」




『海なんやからあるに決まってるやん…』



でも、ムードを変えようとしてくれた夢莉に悪いから私も一緒に色んな綺麗な貝殻を探した。








「そろそろ帰ろっか?寒いやろ。」




『あっ、ありがとう〜…ちょっと寒かってん。』





日が暮れだして、少し風も出てきたから肌寒くなってのに気づいて夢莉は来てた上着を私に掛けてくれた。





「うん、風邪引いたらあかんから帰ろう。」




『あー、楽しかったぁ!ありがとう、ゆーちゃん。』




「また来ような、退院したら。」




『うん!』





そして、また自転車に乗って病院に帰った。





病室に2人で戻るとお母さんがいた。






(ちょっと、どこ行ってたん?!)





「え、あ…散歩って先生に言ったけど。」





(散歩ってどこまでいったん?)




「自転車で、海まで…」



『すごい綺麗やったよ。』





お母さんは、看護師さん達と私たちを探してたみたいでかなり怒ってた。



(あのな、散歩っていうのは病院の敷地内やねんで?海は散歩にならへんやろ!!外出や!!)





『お、お母さん…ゆーちゃんをあんまり怒らんでよ。私が行きたいって言ってん。』





お母さんの怒りは夢莉だけに向いてる感じで、私はすぐにベットに横になったから余計にかも…





(もう…ほんまにあんたらは…)





「まあ無事やったんやからええやん!」




(あんたが言うことやないやろ!!連れ出しといて。ほんまに…もう今度はちゃんとどこ行くか言って許可取るんやで?)





「はーい。」





『はーい。』






(ほんまに反省しとるんやろうか…まぁ、ええわ。じゃあ夢莉?帰ろうか。面会時間終わってるから。)





『き、気をつけて帰ってな…?』





「うん、また明日!」




『また明日!』





夢莉は怒られても全然こたえてなくて、私にちょっとヘラヘラしながら手を振ってきた。




お母さんに怒られても夢莉は全然効かへんのは小さい頃からやけど…まぁやから余計怒られるんやろう。





「あ、忘れとった…」





病室から出た夢莉が帰ってきた…




『忘れ物?』




「さや、おやすみ…」




ちゅっ。





『ふふっ、もう…ゆーちゃん。』





「あはは!」




『おやすみ〜』




キスをして、また帰って行った。





夢莉が居るから今の生活もまた楽しいんやろうな…




今日はありがとうね、ゆーちゃん。



ぐっすり良い夢みれそうです。


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