きみに、一輪の愛を…

□Episode7
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「よし、焼きそばも買ったしかき氷も買いに行こうか。」




『うん!』




焼きそばは夢莉が持ってくれて、また手を繋いで歩き出した。



少し大きくて、いつも温かい夢莉の手が私を包み込んでくれて…この瞬間も本当に幸せですき。







『ゆーちゃん、手が大きくなったよな…?』




「そう?さやが小さくなったんやないん。」




『なってないよ、小さくなるわけないやん…背やって昔は私より小さかったけど大きくなって抜かしたんやから。』




「背もさやが小さくなったんやって、大きくなったつもりないもん。」




『もう…からかってるやろ?』




夢莉は私ことこうやって、いつもの仕返しなのか時々からかってくる。


まぁ、良いけど…





「あははっ、冗談やって!あ、かき氷や。」





『そうや、ゆーちゃんヨーヨー釣りもしたい!』





「え?…」




夢莉の反応に私なんか変なこと言ったかなって思った。

ーーー





『したくないん?小さい頃のトラウマ?』




「ヨーヨー釣りしたやん、さっき2人とも割っちゃって。」




『え?、何言ってるん…ゆーり。』




「いや…さっき、焼きそば買ってる時に2人で遊んでたら俺のがまた先に割れちゃって笑ってたらさやのも…割れたやん。」




『………』





全然記憶がない…?

彩がしたいって言って懐かしかなりながらしたヨーヨー釣りやったけど、予想以上に早く割れちゃって仕方ないってなってた。


「さや…?」




『そ、そうやったね…ごめん。かき氷買いに行こっか。』



「大丈夫?」




『大丈夫!、ちょっと忘れるくらいあるやん。ほら行こう。』




彩はほんまに思い出したんやろうか、なんか心配になったけど…雰囲気も壊したくなくてもう言わなかった。





「かき氷、結構遠くにあったんや…さっき買えばよかった。」







『…………』





「さや、どうした?」





さっきのを引きずってるのか、彩のなんだか口数が減った気がする。



『なんか人混みに酔ったかも…』




「え、気分悪い?」




『…ちょっとだけ。』




静かになったと思えば、人混みに酔って気分が悪くなってたみたい。





「どっか座ろうか?それより帰ろうか。母さん電話する。」




『ちょっと座りたいかも…気持ち悪いねん…』




「あっ、分かった。」





急いで座るところないか、人混みから抜けて探してたら木下にベンチにあった。




「ここに座ろう?大丈夫?」




『うん…ごめん…』



「いや、気づかなくてごめん…母さんに電話してみる。」




とりあえず帰った方が良いって思ったから、母さんに迎えに来てもらおう。




『大丈夫やから、ちょっと休んだら治ると思う…ゆーちゃん、なんか飲み物欲しいねんけど。』





「分かった、ちょっと水でも買ってくる!」




近くに飲み物売ってる屋台があってすぐに行った。







「はい、さや…お茶しかなくてさ。水にしよと思ってたんやけど。」





『大丈夫やで、ありがとう…花火もうすぐやから見て帰ろう?良くなったら歩けるから。』





「うん…無理したらあかんよ?」




『分かっとるよ。』




彩は水を飲んで30分ほどそのベンチで休んだ。








『ゆーちゃん、焼きそば食べんの?』





「ん、食べるけどさ。」




『ちょっと気分良くなったから…私も少し食べたい。』





「ほんまに?」


『ちょっと、汗かいちゃったけど…お母さんがせっかく薄化粧少ししてくれたのに落ちちゃう。』





「ほんまに大丈夫?帰った方が…」



そう言われて顔を見ると、確かに顔色は治ってる…食欲もあるし。




今までも人混みで酔うから、花火大会とか来たがらなかったんやろうな…





『ううん、大丈夫やって食べよう?』




「じゃあ食べよっか。」





彩はふた口くらいで食べるのをやめたけど、美味しいって言ってたし大丈夫かな。





(花火の打ち上げがまもなく始まります。場所で混雑が予想されますので早めの移動お願い致します。)





『あ、花火やって?ゆーちゃん行こう。』




「うん、行こっか。おなか大丈夫?」




『大丈夫やで、少ししか食べてないから吐かへんよ。』




「いや、お腹空かないかなって…」




『ふふっ、空かないよ。』





そう言って、立ち上がってまた手を繋いで花火が見える位置に移動する。





「人が多いから、さやも手を離さないようにな。」





『うん、ちゃんと持ってるよ。』





アナウンスもなってたけど、ギリギリに動く人って多いんやってくらい混雑してて…




一瞬でも手を離すとすぐ迷子になってしまう。







「さや、次信号やからね。」




『うん…』




途中で信号があって、ギリ止まらないと行けなかった。





周りは話し声でいっぱいやから僕たちは話しても聞こえないと思って会話をしてなかった。





「よし、赤や…行こう。」




『う、…』





すっ…





でも、その時凄い勢いで彩の手が離れるのが分かって…焦ったけどまさかの前に抜ける感じで解けた。






一瞬、彩は進み出しても動かなくて…あれ?って思った。その直後やった。





ばたんっ!!!





「えっ…さ、さや!!」





斜め後ろを見ると、彩は頭からコンクリートに頭からぶつけるように倒れてた。





まるで体が一瞬ピンって引っ張られたようになって…





「さや…?さや!!」




すぐにうつ伏せに倒れてる彩を、抱きかかえて仰向けにした。




地面はちょうどコンクリートやったから、額からはものすごい出血をしてて…



意識もなくて、頭が真っ白になる。


傷口を持ってたハンカチで押さえる…




彩が嬉しそうに来ていた浴衣も、血だらけになるくらいの出血や。


「彩!?夢莉くん、何があったん!!」




花火大会に来てたのか、山田さんが居た。





「きゅ、急に倒れて…」




「彩!!しっかり!!」




「救急車!!救急車呼んでください!!」





「あ、うん、、分かった!!」







救急車はすぐに来てくれたけど、彩は全く意識が戻らず…額からの出血もどんどん酷くなってて僕は名前を呼ぶしか出来なくて情けなかった。




付き添って病院まで行った…




救急車の中では、少ししか食べてないのに途中で焼きそばを嘔吐してしまったり手が震えたりしてた。




花火大会、あんなに楽しみにしてたのに…



こんなのってほんまにないよ。





神様はやっぱりいないんや。




手を離さないようにって言ったのに、離れてしまって…ほんまに最悪や。



俺がちゃんとあの時掴めてたら、こんな怪我しなかったのにな…


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