きみに、一輪の愛を…
□Episode6
3ページ/3ページ
「やっべぇ〜遅れる〜」
彩を保健室に連れて行って、教室まで階段を上がってるとチャイムが鳴って確実に遅刻やった。
別に怒られるのもええんやけど、クラス全員の前やと目立つから嫌やなぁって。
ガラガラ…
(ほら、はよ座れ〜)
(遅刻や!廊下に立たなあかんで夢莉。)
「えぇ。」
クラスのまぁまぁ仲良い男友達にそう言われて、彩を保健室に連れて行ってたからとか…なんか彩のせいにしたみたいで言いたくないし。
廊下に立つしかないんか…
(太田はええんや、山田からちゃんと聞いとるからほらええから座れ。)
「あ、はい。」
山田さんがちゃんと伝えてくれてたんや…
さすが、彩が仲の良い友達は優しいな。
それからHRからの授業が始まって、彩が気になるけど…保健室におるしどんな感じか分からへんからそわそわしてた。
今日は授業受けずに帰ることになるかなって…そうしたらもっと彩は落ち込みそうや。
そこが1番正直心配やな…
とか、僕の心配はいらなかった。
ガラガラ。
2時間目が始まる前に教室にきた。
「あ、さや。大丈夫なん?」
『うん、大丈夫やで。階段とかしんどいならエレベーター使って良いって先生が言ってくれてん…あと夢莉と山田も私と一緒におる人はのっても良いって。』
「そうなんや、なんかラッキーやな。」
『ふふっ、でも体育の時は使えんで。』
「あー、くっそ。」
でも、先生も彩のことちゃんと理解してくれてるのが分かってなんかちょっと安心したし…何よりちょっと復活してる彩を見れたから良かった。
『ありがとう、ゆーちゃん。』
「え?」
『ふふっ、なんでもなーいよ。ほら授業始まっちゃう。』
「あ、うん。」
なんでお礼を言われたのかは良く分からないけど…とにかく彩が笑ってくれてたらそれだけで良い。
その日はなんとか乗り越えられて、移動教室も少なかったし…出だしはどうなるかと思ったけど、その週は彩は学校にちゃんと行けた…
次の週は、また治療とリハビリで通院しないといけないから…一日おきに学校に行ってた。
「あ、今週の土曜日って花火大会や。」
『そうやで?忘れてたん?デート。』
「ほんまに行ける?」
『行きたくないなら良いけど。』
彩は聞かれたことが嫌だったみたいで、不機嫌になった。
「あははっ、さやが怒った。」
前もまぁ、僕が色々とだらしなくて彩はしっかりしてるから怒られることもよくあったけど…今はちょっと神経質になってるみたい。
それも仕方ないなって、怒っても拗ねてもそれでも彩の病気の負担は命がかかってる…
そんなの全て僕が受け止めるから、どうか治って欲しい。
『なに笑ってるんよ、、もう、、』
「あ…ごめんって。」
『もういい、、花火大会も行かん。』
そしたら、彩は泣き出してしまって行かないとまで聞い始めた。
病気について色々調べてたけど、抗がん剤の副作用は情緒も不安定になるらしい…
今までここまではならなかったから、少し心配になった。
こんなんで明日は学校が終わったらリハビリに行くって、大丈夫なんやろうか。
体調崩しそうやな…
「ほんまに行かんの?さやが行かんねんなら俺も行かへんし全部なしになるだけや。」
『もう!!ほっといて!!、、、』
がちゃんっ!!
「あ、さや!!」
本当のことを言うと彩は出て行ってしまった。
とにかく、早く追いかけないと…
「ちょい、どこ行く?戻ろう?」
下に降りるだけかと思ってたけど、玄関行って外に出たから…これはちょっとただ事やないって思った。
いつもなら、怒るけどここまではならない…
なにかよっぽどのことがあったんやないかって、頭によぎった。
『ほっといて…』
がしっ。
「あかんよ、ほら帰る。明日学校行くんやろ?リハビリもあるし疲れすぎたらもたへんし…熱も出るよ。」
『ええねん、なんでも、、、』
「さや…?なんかあった?」
『、、、…』
そう聞くと俯くから…やっぱりそうなんやって思った。
「何があった?母さん?、それか病院でなんか嫌なことあった?」
なるべく、もうヒートアップしないように…
慎重に聞いた。
『私もう、あかんかも…』
「え?」
『お母さんと先生の話し聞いてしもうてん…』
「なんて?」
『再発してるかもって、、、もうあんな治療最初からなんてぜったい嫌や…それなら一瞬で殺してくれた方が楽になる…』
「さや、それは可能性って言ってたんやろ?今はまだ治療中なんやから…信じなくて良い。」
『そうやけど…でもっ、、』
「俺はなんてさやに言ったら良いのか分からないけど、でも…再発とか治療とか置いておいて、とにかくずっと一緒に居たいって思ってるから。殺して欲しいとかはなんか…悲しくなる。」
なんて言っても、違う気がして…曖昧な言い方になってしまった。
まだ再発してるかも分からない、してたとしても…彩がこんなに怖がってるのに無理矢理に治療強制なんて出来ない。
やから、こうやって自分気持ちをとりあえず伝えるしか思いつかなかった。
『ごめん…』
「ううん、さやの気持ちは分かる。分からないやろって思うと思うけど…」
『ううん、そんなん思わんよ…ゆーちゃんが一番いつも分かってくれてる。やっぱり双子なんやなって思う。私どうかしてたわ…ごめんね。』
自分の気持ちを伝えると、落ち着いてくれたみたいで…なんかすごい嬉しかった。
僕の気持ちを理解してくれるのやって、いつも彩なんやから…
「じゃあ、帰ろか。」
『うん。』
「さやも…」
『ん?』
「いつも一番俺の気持ち聞いてくれて、理解してくれる。」
『ゆーちゃん…』
「やっぱり双子なんやね、俺たち。」
『うん、ゆーちゃんと話すと…いつもなんかだんだん気持ちが落ち着いてくる。』
「それも同じ、あははっ。」
『そうなんや、ふふっ。』
二人手を繋いで、家にまた帰った。
僕たちは互いがお互いを助け合ってるんやね…