貴方の隣(長編)

□日常から非日常へ
3ページ/5ページ



「うぅ………ん……っ」


小夜は、ゆっくりと目を開ける。
どうやら、眩しい光にやられて気を失っていたらしい。


「もぅ…、なんだったのよあの光は………って………」


頭も覚醒し、周りを見る。


…明らかに、先程と風景が違っている。
最初自分の前には、林があった筈なのに…


「なん、で……森の中に…いるの?」


林の中でなく森林の中に、何故自分がいるのか。


突然な状態になってしまい思考が追いつかない。


「お、落ち着けー…。と、とにかくこの森を出ればいいんだから…。いや、まずケータイで母さんに電話をしないと…」


小夜は持っていたバックから携帯を取り出し、自宅へ掛けた。しかし…


「…繋がら…ない…。森だから…?」


何度掛けても、その携帯は繋がることはなかった。


とにかく、森を抜けなければと小夜は歩き始める。


ふと、何やら不穏な気配を感じて小夜は振り向いた。


「……誰か…そこにいるの?」


小夜が問いかけた瞬間、人の姿をしていない化物が現れた。


「ククク!久々に、人間の女の肉を喰えるわ…」


「!!??」

化物との遭遇に、小夜は固まってしまった。
驚きすぎて、声すら上げられない。


身体は震え、腰が抜けてしまった。


「こ、来ない…で…!化物…、妖怪……!あっち行ってよ…!」


震える声で、精一杯の言葉を吐き出した。
しかし、妖怪相手にそんなものが通じる訳もない。


涎を垂らしながら、小夜との距離を詰める妖怪。


(もうダメ…私死んじゃうの?こんな訳分からないまま…)


妖怪が飛び掛る瞬間、小夜はぎゅっと目を閉じた。


その時だった。


「…毒華爪!」


「ぎゃあああッッ!!」


妖怪の叫び声と、冷たく静かな男の声が聞こえた。


うっすら目を開けると…


小夜の前に、美しい長い髪を靡かせる青年が立っていた…



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ