貴方の隣(長編)
□日常から非日常へ
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「うぅ………ん……っ」
小夜は、ゆっくりと目を開ける。
どうやら、眩しい光にやられて気を失っていたらしい。
「もぅ…、なんだったのよあの光は………って………」
頭も覚醒し、周りを見る。
…明らかに、先程と風景が違っている。
最初自分の前には、林があった筈なのに…
「なん、で……森の中に…いるの?」
林の中でなく森林の中に、何故自分がいるのか。
突然な状態になってしまい思考が追いつかない。
「お、落ち着けー…。と、とにかくこの森を出ればいいんだから…。いや、まずケータイで母さんに電話をしないと…」
小夜は持っていたバックから携帯を取り出し、自宅へ掛けた。しかし…
「…繋がら…ない…。森だから…?」
何度掛けても、その携帯は繋がることはなかった。
とにかく、森を抜けなければと小夜は歩き始める。
ふと、何やら不穏な気配を感じて小夜は振り向いた。
「……誰か…そこにいるの?」
小夜が問いかけた瞬間、人の姿をしていない化物が現れた。
「ククク!久々に、人間の女の肉を喰えるわ…」
「!!??」
化物との遭遇に、小夜は固まってしまった。
驚きすぎて、声すら上げられない。
身体は震え、腰が抜けてしまった。
「こ、来ない…で…!化物…、妖怪……!あっち行ってよ…!」
震える声で、精一杯の言葉を吐き出した。
しかし、妖怪相手にそんなものが通じる訳もない。
涎を垂らしながら、小夜との距離を詰める妖怪。
(もうダメ…私死んじゃうの?こんな訳分からないまま…)
妖怪が飛び掛る瞬間、小夜はぎゅっと目を閉じた。
その時だった。
「…毒華爪!」
「ぎゃあああッッ!!」
妖怪の叫び声と、冷たく静かな男の声が聞こえた。
うっすら目を開けると…
小夜の前に、美しい長い髪を靡かせる青年が立っていた…
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