夢_Short

□#7月7日は(仙道2年)
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うわっ、見られた、と思った。恥ずかしい、と思うより先に仙道に聞かれた。

「この‘7’って誰?」

たまたま自分の携帯の着信履歴画面を出して操作していたときに、ひょいと仙道が隣からのぞき込んだのだ。
仕事やらプライベートのいくつもの履歴の中に度々出てくる相手先『7』。それを仙道は目ざとくみつける。

「こんなにやり取りしてる…俺以外にももしかして他に好きなヤツ、いるの?」

『7』という着信履歴は、今目の前にいる仙道その人のことなのに。

肝心の本人はそのことに気づいてない。

他の人は本名でちゃんと登録しているのに、恋人の仙道のことは何だか恥ずかしくて本名で登録できず、携帯のアドレス帳は‘7’と数字一文字、仙道の高校時代のユニフォームの番号でいれてある。だから仙道からの着信履歴もメールも、仙道からの連絡は全て『7』―。

今日だって会う前に待ち合わせの場所で見つからなくて何度か電話をした、その着信履歴なのに、仙道は、なぁ、誰?と挑戦的な眼差しで問いかけてくる。

「あ、これすげえじゃん、7月7日…って今日か。7から3回も電話来てる」

7が3つ並んでてめでたい感じだな、なんて言いながら、それで誰?と顔を覗き込んできた。

「…誰でもいいでしょ」

「あーあ、俺振られちゃうんだ」

「どうしてそうなるのよ」

「じゃあ、教えて?」

普段私がどこで誰と何をしていても気にしないのに、今日の仙道は珍しく食い下がる。

「…彰くん」

「ん?何?」

「彰くんだよ、コレ」

よく見てよ日付と時間、と仙道の前に画面を差し出す。

「今日も待ち合わせ前に場所分からなくて電話したでしょ?これは昨日の電話で、これは一昨日の…」

「ほんとに?俺、こんなに電話してた?」

沢山並ぶ着信履歴の中に定期的に目立つ短い『7』という相手先。

「ああ…確かに」

自分の携帯をいじって仙道は私の携帯画面と見比べた。

「全然そんなつもり無かったのに、めちゃくちゃ電話してるな俺」

仙道が笑った。

「自分で自分に焼きもちやいた」

でもさ、と仙道は言う。

「何で名前じゃなくて数字なんだ?しかも7」

仙道彰って表示にしたらドキドキが止まらなかったからーそんなこと本音は言えるはずもなくて、面倒くさいから高校時代の背番号にしたの、とだけ言うと仙道は不思議そうな顔をした。

「でも俺、7番だったのって高2のときだけだぜ?」

確かに言われてみればそうなのだけれど。
私の中で一番鮮烈に印象に残ってて、初めて好きを意識した瞬間の仙道が7番のユニフォームだったのだ。それ以来ずっと何番を身に着けようと、仙道のバスケ姿を見ると7が思い浮かぶ。

「あの頃で止まってるのかも」

「過去の俺になんだか妬けるな」

言って、雑踏の中で仙道がぐいっと私の身体を
引き寄せた。


2022.7.7
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