短編集 -3-dimensional-
□Hypnotism
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撮影終了後、メンバーがスタジオから出て来るが皆が名を探している様子で齋藤が名を見つけた瞬間に駆け寄ってくる。
「名!!」
「齋藤さん?こんにちは」
「飛鳥で良いってば…じゃなくて!逃げて!」
「え?」
いつものペースで話そうとして、齋藤は首を横に振り名の手を掴んで走ろうとする。
「あー!名ー!!」
「しまった…遅かったか…」
恐ろしい程のハイテンションな白石が名へタックルするように抱きついてくるので何とか受け止める。
「ど、どうしたんですか?」
「えへへ〜、私は名の事がだーいすきだからっ!」
困惑している名を気にする事なく白石は名を強く抱きしめる。
「……どういう事態ですか?」
明らかに様子のおかしい白石だが、普通の男性なら役得としそうなものだと齋藤は期待したが名の眉間には皺が寄っていく。
乃木坂のメンバーが最も恐れている名の本気説教モードになる前兆を見た齋藤は早めに自分は関係ない旨を伝えようと頭をフル回転させた。
「催眠術を受けるって企画の収録だったんだけど…収録終わってから、メンバーがふざけて催眠術を掛けたら暴走して誰もとめれなくなっちゃった…」
「…ふざけて…?…催眠術を?…なるほど…乃木坂は白石さんを殺したいのでしょうか?」
「えっと…あの……皆、悪気があったわけじゃ…」
事情を説明すると名の背中から滲み出る怒りが周囲に充満するので、齋藤は事を穏便に出来ないかと言い訳を考える。
「催眠術は人を自殺に追い込む事も出来る危険なものです…実際、この周囲が見えていない状況で路上に出たら車に轢かれて即死します」
「…………ごめん…なさい……」
事故に繋がる事を想定していなかった齋藤は名から現実を突き付けられ、改めて恐怖を感じながら項垂れて素直に謝った。
「あ、いや、齋藤さんを責めているわけでは…つい、口調が厳しくなってしまいましたね。白石さんは、何とかしますので齋藤さんは皆に今後は気をつけるように伝えてもらえますか?」
「あ…うん…分かった…名が怒ってたって言っとく」
名はシュンとしている子犬のような頭を優しく撫でると、少し驚きながらも照れた表情になった齋藤は早足でメンバーの元へ戻っていった。
「わ〜た〜し〜に〜も〜!ポンポン!」
「さて、どうしましょうか…とりあえず、催眠術の先生に連絡ですかね」
幼児退行化している白石に大人の対応をしても意味がない様子だったので、名は白石の頭を撫でながら催眠術に詳しい人間を調べて片っ端から連絡を取った。
〜・〜