短編集 -3-dimensional-
□正直な気持ち
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昔はよく遊んでいたが乃木坂というアイドルとして有名になっていく彼女に迷惑を掛けてはいけないと名から距離をとって音信不通だったので自宅にいる状況が飲み込めなかった。
「また、急だな」
「だって、名から避けられてるから」
「そりゃな、アイドルにスキャンダルなんてなったら大変だし?」
「そんなん関係ないっていったやん」
「七瀬はそう思っても、周りはそうじゃないの。夕食は?食べる?」
「食べる〜」
シリアスな話の流れを名はスーツを掛けながら聞き流して、腕まくりしながら七瀬に聞くと即答で返す。
「で、乃木坂で何かあったのか?」
「結構、ニュースになってんのになぁ…ななが卒業するの知らん?」
「知らん」
会話が途切れ途切れになりながら、出来上がったオムライスを二人で食べる。
「あのさ…………なんで、名はアイドルが嫌いなん?」
「いや、嫌いなわけじゃないけど」
「じゃあ、ななが嫌いなん?」
「…嫌いな人にメシ作るか」
「……なんなんよ……」
ぶすっとした表情をしながらオムライスを食べる七瀬に名はため息をつく。
「アイドルの西野七瀬に興味ないだけ」
「アイドルの…なな?」
「乃木坂のなぁーちゃんは皆のものだろ?俺は泣き虫の七瀬が……」
しまったという顔をして名は口を閉ざすので七瀬は口元が緩む。
「泣き虫のななが?」
「なんでもない、さっさと食べたら帰れ」
「ひどい!やっぱり、ななの事嫌いなんや!」
「笑いながら言うな。色々、立場ってのがあるんだよ」
名は話は終わりだというようにテンションが高くなってニヤついている七瀬を軽くあしらって食べ終えた皿を片付ける。