欅の宿り木
□欅の宿り木 5話 前編
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座敷わらしという妖怪が日本にはいる。
屋敷に暮らして、家人に悪戯するが見たものは幸福が訪れるという妖怪だ。
妙な時間に人の気配を感じて自然と目を覚まし、誰もいないはずの部屋の片隅に正座してる女の子の人影があり、こちらを睨んでいる。
寝ぼけているせいか、はたまた夢の続きをみているのか分からないが確実に存在している。
「座敷…わらし…か…?」
「は?」
目を細めるが視界はぼやけているので、布団を頭まで被り直すと座敷わらしは名の方へ移動してくるのを感じる。
「………俺は良いから…もっと頑張ってる奴を幸せにしてやってくれ………この前…この部屋に来た奴…とか…」
寝ぼけながら、手を伸ばすと頭らしき感触があったのでワシャワシャと撫でる。
「…名は昔から…人の幸せばっかだね…………」
寝起きに嫌味の一つでも言ってやろうと思っていた気持ちが揺ぎ、溜め息となって心から出ていく。
「てか、座敷わらしって…お化けじゃん……なんか急に怖くなってきたし…」
「…ん〜…狭いっ…て…」
「だって……怖いんだから仕方ないでしょ」
座敷わらしはキョロキョロと周りを見渡し、今まで怒りで忘れていた怖い状況に自分がいる事を思い出して名の布団の中に潜り込んだ。
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