欅の宿り木

□欅の宿り木
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「迷惑?」



「別に…」



「誰かに言わないの?欅坂の平手が俺の部屋に来てる。かっこ笑い…みたいな…」



名の携帯を指差して、アイドル特有の綺麗な表情を作り、上目遣いでピースをしてみせる友梨奈に名はため息をついてから消しゴムを投げた。



「一応、味方のつもり……信じろとは言わないけど……」



「……………」



消しゴムが当たった頭部を抑えながら睨んでくるが、気にしていない様子で隣に座り友梨奈が読んでいた雑誌をめくる。



「周りの奴はゴチャゴチャ言ってくるかも知れないけどな…限界まで努力して倒れた人間を野次ったり、茶化したりする権利は誰にも無いと俺は思ってる。これから、再び立ち上がるのか、別の道を探すのかは自分で決める事だから何も言わないけど…今のお前を貶す奴、笑う奴は許さない」




「……なんか…熱いね」




「…だな。なに語ってんだろな…忘れてくれ」





無表情のまま呟く友梨奈に名は頭を掻きながら自分に呆れたような表情を見せる。




「…ううん……ありがとう…」




恥ずかしそうな名の姿を見ると、はにかんだような自然な笑みを見せながら肩に頭を預けてくる友梨奈の頭を撫でた。




「…懐かしい……落ち着く…」



「…よく…頑張ったな…」




「……っ…」




名の言葉が心に染み込むと涙が溢れ出し、泣き顔を見られないように胸に飛び込んで声を殺して泣き続ける。



「大丈夫……大丈夫だから…」



TVの中で映る彼女からは想像できない程、弱々しく不安な感情を背中を撫でながら受け止め続けていると泣き声は寝息へと変わった。






ー・ー
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