短編集 -3-dimensional-
□je suis aimee Trois
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「撮影は以上になります」
「ありがとうございました〜」
雑誌の撮影は機材の搬入遅れや、グダグダの進行で2時間以上も遅れていた。
次は握手会の予定もあったが、これから後輩たちも世話になる雑誌。
無碍に断ったりすれば、どうなるか考えるまでもない。
麻衣は携帯で時間を確認し、心配する連絡をくれていた桃子に間に合わない旨を返信する。
「っ…はぁ……あー…もう」
握手会を遅刻すれば、その時間だけ予定を空けて楽しみに来てくれた人に会えなくなる。
苛々しながら、廊下を歩いているとジーパンにチェック柄のシャツを着てカーボーイハット風の帽子を被っている男と出会う。
「おれがつーいてるぜ〜♪おれがつーいてるぜ〜♪…よう!お嬢さん、お困りごとかい?」
「・・・師匠?」
「ハンバーーーグ!!!…おい、やめろや。せっかくウッディなりきってたのに」
麻衣は目を細めながら呟くと叫んだ後に不満げな顔をした名が返してくるので思わず吹き出す。
「どうしたの?こんなところで」
「仲間を見捨てない。それが、ウッディだろ?」
「ん〜よく分からないけど、迎えに来てくれたの?」
「あー、うん。まとめるとそんな感じ」
とりあえず、先に進もうと駐車場まで歩きながら2人は会話しているが麻衣の表情はふたたび翳り始める。
「もう、間に合わないよね…」
「俺のブルズアイに乗っていけよ」
「え?」
「ブルズアイに」
「バイク?」
「うん、そう」
駐車場まで着くと車ではなく、バイクの前に案内されてヘルメットを渡される。
麻衣が固まっている間に名はバイクに跨がり、後ろに乗るように促され困惑しながらも従った。
〜・〜