短編集 -3-dimensional-
□Cerisier reprendre
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桜が満開の河川敷。
地元民しか知らない美しい桜の木の下で、名は幹に腰掛けて桜吹雪を見上げる。
「…」
時計の針は深夜帯を指し、誰も近くに通る事はない。
青白く強く輝く月明かりが辺りを照らし、掌を花びらにかざしていると足音がする。
「となり、座っても良か?」
世間でも有名なアイドルが現れ隣に腰を下ろすが、名は驚く事なく桜を見上げ続ける。
「…好きな人はどうなったと?」
「あぁ…うん、進展ないかな」
「そっか……上手くいくといいね」
去年まで2人で1つの存在だった名達はこの桜の下で違う道を歩み始めた。
去年より大人っぽくなった、ねるの横顔に目線を移すと照れた様子でねるも視線を合わせる。
「ねるは?仕事、順調?」
「ん〜…もう少しで卒業やけん、あんまり入れてない」
理由はありふれたもの。
仕事とプライベートの両立は難しく、名に合わせようと必死になり疲弊していく長濱ねるを見ているのが辛くなった為。
名は好きな人が出来たと告げて、ねるを送り出した。