欅の宿り木
□欅の宿り木〜最終話〜
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「てち、僕だよ?覚えてるかい?」
「っ!?」
以前、握手会を無茶苦茶にした男。
友梨奈はナイフを持った男の顔を覚えていたが、質問に反応することはなく目線を逸らした。
初めて人から理不尽な悪意をぶつけられた相手にトラウマが体を震わせる。
「今度こそ、ナイフで刺してあげるからね?」
「サバイバルナイフかぁ………」
完全に友梨奈を背に隠して立つと、男はナイフを名に向けてくる。
「ドラマの共演者の人?用ないから。消えてくれるかな?」
「…はぁ……なに?刺してどうしたいの?」
友梨奈と名の服装が似ている為か、男は名の立場を勘違いしているようだったが名は気にする事なく友梨奈が立ち上がる時間を稼ぐ。
「てちを殺すんだよ」
「理由は聞いても理解できなさそうだから聞かないけど…アンタの目は…人を殺す目をしてないけど?」
友梨奈が立ち上がった事を確認すると、後ろに手を回し、少しずつ下がっていけと手で合図を送る。
薄暗くなった空からは雨粒が落ち、雷鳴が響き渡った。