欅の宿り木

□欅の宿り木 6話
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コンディションとモチベーションが最高まで高まりポテンシャルを最大限まで引き上げたパフォーマンスというものは、息をするのを忘れさせる程に惹きつけられる。




そんな三浦のステージを本番で見せつけられた名は心からの称賛を言葉にして送る。





それは、欅坂のステージにも言える事だったので名は三浦の許可を貰って欅坂の楽屋まで行く事を決めた。





「あ…」





楽屋の近くまで行くと、誰かを探しているような友梨奈が居たので軽く手を挙げると余裕のない瞳が名を捉えた瞬間に飛び付いてくる。




「おいっ……どうした!?」




「あと一曲…踊らなきゃ……いけないのに……いけ…ないのに…っ……」




抱きとめた友梨奈の体は小刻みに震え、呼吸も不安定でパフォーマンスどころの話ではないのは明白だった。




「もう良い、休め…これ以上は」




「嫌!…絶対…嫌……お願い、名…気持ち貸してよ……お願いだから…」




「友梨奈………」




立ち止まると折れてしまいそうな友梨奈の震える声に名は空いている部屋に入って椅子に座らせる。




「名、私は…」




「分かってる……ちょっとでも良い…体を休めろ」




「あり…がと…信じてくれて」




自分を引き止めようとするつもりかと友梨奈は名に反抗的な目線を向けるが、優しく手招きして両手を広げる名の姿に弱々しい笑みを見せて飛び込んだ。




「良いから、少し休め」




腕に何かしらの損傷を抱えている事は分かっていたが、友梨奈の意思を尊重して送り出す事が正解だったのか最後まで分からなかった。











続く。












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