欅の宿り木
□欅の宿り木 6話
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日本の年末恒例番組。
老若男女が名を知る歌番組というのは、名の想像の数十倍大掛かりで元々の運営スタッフからアーティスト専属のスタッフまで入り乱れ、リハーサルや楽屋挨拶など目が回るほど忙しく動いていた。
「マジで雑用させちゃって、ごめんな!」
「いえ、こっちの方がバイト感あるんで!次、行ってきます!大知さんは挨拶回りとリハを頑張って下さい!」
「おう!」
楽屋挨拶と差し入れは同時進行だと時間が掛かるので、差し入れ先行で楽屋に配るが楽屋自体が無数にあって、名は宅配業者のように動いていた。
指示された部屋にノックして、要件を伝えたら荷物を置いて即退散。
他の運営スタッフも同じような事をしており、スタッフの証明書を首から下げて三浦大知の運営スタッフだと分かるキャップを被っている為、荷物はこっちに置いてくださいと言われるぐらいで難易度は高くないので名もテキパキとこなしていく。
「失礼します!」
「ずっきゅん!」
ノックして許可が出た楽屋に入った瞬間に女性がいて、ウィンクしながら名はゼロ距離で撃たれた。
「え?えっと…」
「え…やば、まいやんじゃない…」
名が反応に困っていると、目の前の女性も焦っている様子で互いに立ち尽くした瞬間に名の後ろからドスの効いた声がした。
「……出入りするの私達だけじゃないって言われたの忘れた?」
「いやぁ…その…」
目の前の女性が歯切れの悪い反応をしている理由は名の背後からピリピリと感じる禍々しいオーラによるものだと感じて、名はゆっくりと振り返る。